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区民参加型で水辺の可能性と活用方針を考える「港区水辺に親しむシンポジウム」が開催!

2026年4月23日

2026年3月20日(金・祝)に開催された、「港区水辺に親しむシンポジウム」。
様々な再開発をきっかけに模索が進む港区の水辺活用について、国内外の事例を参考にしながら区民参加型で活用方法を考えていく機会として開催されました。
港区と「BLUE FRONT SHIBAURA」を手がけている野村不動産による合同開催という点も注目のこのイベントを取材しました。

各地の事例紹介と専門家の知見が得られたシンポジウム

イベントの流れは、港区障害保健福祉センター(ヒューマンぷらざ)でシンポジウムを行い、その後「BLUE FRONT SHIBAURA」の船着き場から水辺を楽しめる体験クルーズに出発、というものでした。
様々な方々と一緒に水辺活用について考えていくために、シンポジウムから体験クルーズまで、港区民や港区に在勤・就学中の方も参加することができました。一般の参加者は約100名限定となり、結果として抽選制に。残念ながら抽選から漏れてしまった方もいらっしゃるほど注目度の高いイベントとなりました。

イベントを主催したのは、港区側は区民参加型の政策を担当している芝浦港南総合支所の協働推進課と、「Hi-node」や「BLUE FRONT SHIBAURA」の船着き場を設置するなど、積極的に水辺とまちを繋ぐ取り組みを行っている野村不動産という組み合わせです。まずはシンポジウムに先んじて清家愛港区長から挨拶があり、「水辺の活用に向けて、楽しみや気付きにつながってほしい」とコメントがありました。シンポジウムで最初に登壇したのは、水辺を活かしたまちづくりと実践を専門としている、日本大学理工学部海洋建築工学科助教の菅原さまです。

最初に菅原さまから港区の水辺のポテンシャルについて整理していく中で、「水門があって波が穏やかな点はプラス」などの意外なメリットを挙げられたのち、「水辺を使いこなすようなアクションが鍵」と水辺活用の方向性を整理。
それを踏まえて、「(水辺で)何かが起こっていることが大事」と述べ、ハード的な整備だけではなく、イベントの開催や自然に人が集まるような場の構築の重要性を説かれました。

「体験する・創造する・住まう」など、住んでいたり働いている人々が水辺を「使いこなす」アクションの実例について、国内外の事例紹介を通じて紹介がありました。
そして、実証実験として高浜運河(品川駅港南エリアの運河)でその場に留まれるように椅子などを設置したところ、滞在時間が最大10分以上増加した取り組みを紹介。
結びとして、水辺でやってみたいことを市民がトライする、ボトムアップ型の水辺づくりの重要性を指摘されていました。

菅原さまの講演の後は、国内の参考事例として、各地域で水辺政策を推進する担当者による講演となりました。
一人目は、水都大阪コンソーシアム事務局長の松井さまです。
大阪は梅田・大阪城・難波などに囲まれたエリアに複数の河川による「水の回廊」が形成されており、近世以降水運が発達し、明治時代には「水の都」とも呼ばれていました。昭和以降様々な理由で忘れ去られていた「水都大阪」を復活させるため、2001年に内閣官房都市再生本部によって都市再生プロジェクトに指定されたことをきっかけに、取り組みが開始されました。

2017年には官民一体のプラットフォームとして、「水都大阪コンソーシアム」が設立。
大阪府・大阪市が政策として民間とともに水辺活用を推進しています。

松井さまからは大阪が「水の都」と呼ばれるようになった歴史的経緯から、水都再生の取り組みについて説明。水質を含めたハード面の整備についても言及がありました。
また、行政・経済界・市民が一体となったイベントや万博を契機とした取り組みを紹介。水辺エリア全体で取り組んでいる点や、市民発の活動も多くあったことが印象的でした。

次に、広島県商工労働局イノベーション推進チームの八巻さまからも講演がありました。
こちらはやや切り口を変えて、広島市民の一人として、水辺の暮らしを実体験として紹介する形でした。

広島は川べりに柵がないところが多い、雁木(※船着き場に見られる階段状の構造。潮汐や河川の流量変化に対応しつつ舟に乗り荷物を載せることができた)が多い、といった地域特性もその流れで紹介があり、松井さまも述べられていた地域特性を活かした水辺活用の重要性について説得力を持たされていました。
また、水辺を使ったイベント時に必要となる河川事務所や広島市への申請を一手に引き受ける市民主導のコンソーシアムが設立されていて、バラバラに行うと煩雑になってしまう許可申請を一本化しているという手法についても説明がありました。イベントの開催など民間発の活動を後押しする方法として、港区にも取り入れられそうな非常に興味深い手法だといえます。

講演後はトークセッションが行われ、菅原さまがコーディネーター、前述の松井さま八巻さまに加え、港区芝浦港南総合支所の野上さま、野村不動産の四居さまも参加されました。
トークセッションは、「水辺活用の可能性」と「実現に向けたポイント」をテーマに展開。
「水辺活用の可能性」では、野村不動産の芝浦プロジェクト企画部長の四居さまから「船に乗ると手を振られますが、そういった普通はないことが起きるのが運河の魅力ではないか」と述べられ、水辺のポテンシャルに大きな期待を寄せられていました。

「実現に向けたポイント」では、松井さまから「小さな・ゆるい活動から始めていくことの大切」という意見が。港区でも取り入れられそうなアドバイスです。

最後のテーマとして、「今後大切になること」として、八巻さまから好きな場所をつくることの大切さや「住民が愛着を抱く→自慢したくなる→街がよくなる」というエリアが活性化していくサイクルがあるというお話も納得でした。
シンポジウムの締めくくりとして、野村不動産常務執行役員山田さまから「BLUE FRONT SHIBAURA」などの取り組みについて説明がありました。

クルーズ体験で「BLUE FRONT SHIBAURA」の船着き場へ!

トークセッション後は、一般参加者お待ちかねのクルーズ体験の時間となりました!シンポジウム会場から移動したBLUE FRONT SHIBAURAの船着き場(BLUE FRONT SHIBAURA PIER)は桟橋が完成しており、商業施設と桟橋がつながった水辺とシームレスな空間になっています。
ただし、取材時点(2026年4月)で船着き場はBLUE FRONT SHIBAURAでのイベント開催時のみ利用可能で、桟橋へ自由に立ち入ることはできません。
桟橋に降りると、「BLUE FRONT SHIBAURA」を目の前で見上げることができます。
余談ですが、「(ガラスが空を反射するため)薄曇りの日のBLUE FRONT SHIBAURAも見どころ」という設計者・槇総合計画事務所のコメントが、シンポジウムで野村不動産より紹介されました。

参加者は三隻の船に分かれて乗船し、いよいよ出発です!
クルーズ体験の船はBLUE FRONT SHIBAURA PIERを出発すると、五色橋(港南3丁目付近)まで南下、東京湾に出るとレインボーブリッジを南からくぐって芝浦・日の出ふ頭を横目に浜崎橋(竹芝エリアの南)まで北上し、BLUE FRONT SHIBAURA PIERに戻ってくるというルート。芝浦エリアの運河と東京湾の景色が両方楽しめるルートでした!

下船後は、そのままBLUE FRONT SHIBAURA TOWER Sの2階「CANAL DINING HALL」に向かうこともできました。「CANAL DINING HALL」はフードコート形式(日中のみ。夜間はレストラン営業)で、食事をとりながら一息つけるなど、「BLUE FRONT SHIBAURA PIER」本格稼働後の楽しみ方の一端を知ることができました。

当日はシンポジウム中に雨が降るなど、快晴とはいかない天気でしたが、BLUE FRONT SHIBAURA館内を経由して「GREEN WALK」を歩けば、浜松町駅まで例え雨が降っていても濡れずに移動できる導線が既に整えられていました。

港区のイベント担当者に訊く水辺の今後

一般参加者と港区と野村不動産が一同に会して他の自治体の先行事例についてお話を聞くという、意欲的なイベントとなった今回の「港区水辺に親しむシンポジウム」。
今回のイベントについて、ご担当された港区芝浦港南総合支所協働推進課地区政策担当(以下、協働推進課)の堀合竜二さまにいくつかご質問させていただきました。

――「シンポジウム」の形式を選んだ理由は?

協働推進課「水辺の専門家による講演や先進都市の活動紹介を通じて、広く区民の方々に興味を持っていただくことを目指しました」

区民の水辺への関心醸成を目的に、水辺の専門家・先進自治体・地域活動など多角的な視点を盛り込むために、今回のようなイベント構成になった、ということです。

――イベントが野村不動産さまとの共同開催となったのはなぜでしょうか。

協働推進課「芝浦港南地区の新たなランドマークとなりうる『BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S』が開業されることから、シンポジウムの会場にできないかと考えたのがきっかけでした」

野村不動産さまとはこれまでにも芝浦港南支所の事業を通じて接点があったことと、野村不動産さま側が『BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S』開業にあたり国内外の様々な水辺活用事例を調査していたことを知り、協力を打診されたということでした。

――「クルーズ体験」も組み合わせられたのは、どのような狙いでしょうか。

協働推進課「専門家等による水辺の活用事例の紹介や、参加者との意見交換などに加え、港区の芝浦運河や海をクルーズ船でめぐっていただき、水辺の魅力を知っていただきたい想いで実施しました。講演だけでなく、『見て・乗って・触れて』港区の水辺の魅力を体感いただけるように、クルーズ体験を企画しました」

――港区民以外(港区在勤・在学者)もイベントに参加できたのはなぜでしょうか?

協働推進課「港区には区民に加え、多くの在勤者、在学者の方がいらっしゃいます。区内での取り組みを多くの方に知っていただき、体験いただきたいといった想いがあり、幅広い方を対象とさせていただきました」

港区では様々な水辺活用を行っており、例えば運河にかかる橋りょうのライトアップによる空間そのものの魅力を向上、橋の個性を引き出す取り組みをしています。こういった取り組みを広く認知してもらうために、区外の方にも参加していただいたということでした。

―― 今後のイベントなど取り組みについての見通しを教えてください。

協働推進課「水を眺めるだけでなく、実際に触れて、涼しさや音を体で感じる。砂浜の感触を楽しむ。そんな“非日常”を都心で味わえるのが、港区の水辺の魅力です。海や運河など、多様な水辺を持つ港区では、場所や時間帯に合わせて体験をデザインでき、楽しみ方はさらに広がります。区は令和8年度に水辺の専管組織を設置し、取組をさらに加速してまいります。ぜひ皆さまも、港区の水辺の魅力を周りの方に一言でも広めていただき、いっしょに水辺を盛り上げていただければ幸いです」

地域で盛り上げていきたい水辺のアクション

シンポジウムを通して気になったのは、大阪や広島といった先行事例のご担当者さまや菅原助教さまの全てから、ボトムアップ型の水辺活用の重要性を説かれたことでした。
もちろん、港区主催の住民参加型活動や、野村不動産さまによるエリアマネジメント組織を基盤とした活動は存在しています。
しかし、あくまでそれらは区の活動に自ら参加されている方や、再開発地域にお住まいの方に限定されています。
今後は、例えばお住まいが水辺近辺ではない方が水辺を利用するには? 区民側からも水辺を盛り上げていくには? を考えていく必要があるように思えます。

考えるだけでなく、広島の事例にあったような東京都港湾局や港区と区民の間に入る組織や、大阪の事例に登場した地元の企業も巻き込んだ有志連合体のような、活動の受け皿となる組織の立ち上げを進める必要もでてくるかもしれません。そういった構造面からも、行政・企業・区民の枠を越えて試行錯誤していくことになるのではないでしょうか。

もちろん、これらの取り組みには時間がかかります。例えば大阪の事例は2000年代から取り組みの原型自体がスタートしており、腰を据えて対話と実行を繰り返しながら進めていくことになるでしょう。

港区の水辺活用は、まだ始まったばかりです。

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