いざまちローディング画面

「インディアンレストラン西麻布 by KENBOKKE」でインドの食文化を満喫——目前に標柱が立つ人気店で味わう「笄坂カレー」

2026年6月3日

麻布の坂にまつわる歴史や由来を一皿に詰め込んだご当地グルメ「麻布坂カレー」。カレーといえば都内でも、神田神保町エリアや下北沢など、カレーイベントで知られる街を思い浮かべる方も多いでしょう。

“カレーの街”と呼ばれるライバルが数多く存在するなか、あえて2024年から始めた麻布坂カレープロジェクトとは、一体どのようなものなのか。

その魅力を探るべく、プロジェクトを主催する「港区麻布地区総合支所」へのインタビューや、参加飲食店で実際に麻布坂カレーを味わう企画をお届けしてきました。

今回、麻布坂カレー巡りで訪れたのは、「インディアンレストラン西麻布 by KENBOKKE」です。実はこのお店、2026年4月10日に放送されたグルメドキュメンタリードラマ『孤独のグルメ』でも紹介されています。

お店目の前にある「笄坂(こうがいざか)」をテーマにしたカレーを味わうことに加え、今回は『孤独のグルメ』で井之頭五郎(演・松重豊)さんが食べていた「ライタ」についても伺うという、もうひとつの目的も……(笑)

「インディアンレストラン西麻布 by KENBOKKE」は、東京メトロ日比谷線・都営地下鉄大江戸線「六本木駅」1c出口から向かうのが便利。六本木通りを渋谷方面へ約10分歩いた、笄坂の途中に店を構えます。

飲食店やコインランドリーなど多彩な店舗が充実する「麻布エンパイアマンション」の2階にあります。

2階ベランダに設置されたインドの国旗が目印です。

西麻布で40年愛される
ジャズの流れるインド料理店

お話を伺ったのは、オーナーの鈴木 陽子(すずき ようこ)さん。孤独のグルメでは、シェフのサドゥラム・ラホトラさんと一緒にドラマに出演しています。

——西麻布で40年以上続く「インディアンレストラン西麻布 by KENBOKKE」さん。こちらのお店の魅力は何ですか。

鈴木さん:テーブルクロスを敷いたり、絵画作品が飾ってあったり、静かめのジャズの曲を流していたりと、お店に入った瞬間はインド料理店らしさがなく「フレンチレストランかな」と思わせるようなギャップが当店のチャームポイント。

ホテルのレストランやギャラリーのような内装を意識しています。インド料理店といえば、象のオブジェが飾られていたり、賑やかな曲がかかっているようなイメージをされる方が多く、よくお店を通り過ぎてしまう方もいますね(笑)

開業から40年、シェフや料理、お店のたたずまいが変わらないことも、長く愛されてきた理由のひとつだと思います。30年前にこのあたりで働いていて、よくランチに当店を利用していたという方が久しぶりに来て「変わっていないね」と言ってくださいます。

インド料理店らしからぬ、シックな雰囲気が漂います。

8年前からお店のオーナーを引き継いだという鈴木さん。以前は証券会社で投資業務などに携わっていたそうです。

鈴木さん:ご縁あって、こちらの経営を引き継ぎました。オーナーをしながらほかのいろいろな分野も経験していて、今は現代アートを展示・販売するアートフェアなどを企画しています。

インディアンレストラン西麻布 by KENBOKKEオーナーの鈴木陽子さん。インタビューではお店やインド料理への愛がひしひしと伝わってきました。

——インドの名門タージマハルホテルムンバイをはじめ、世界各国の同ホテルやレストランで腕を振るったシェフによる北インド料理が味わえると伺いました。特に人気のメニューは何でしょう。

鈴木さん:ランチメニューでは、2種類のカレーとサフランライス、ミニサラダ、穀物や豆のおせんべい「パパド」が付いた平日限定の「ワンプレートランチ」が人気。3種から選べるドリンクも付いてくるので、ランチにしてはボリュームたっぷりと評判です。

おすすめは、自家製ヨーグルトとスパイスをマリネし、炭火タンドール釜でじっくりと焼き上げた「タンドリーチキン」。とにかく新鮮でおいしいチキンを厳選して使っています。

港区長との縁から生まれた
北インド料理店のご当地カレー

——今回、麻布坂カレープロジェクトに参加された経緯を教えてください。

鈴木さん:港区長の清家 愛(せいけ あい)さんが当店を家族ぐるみで利用されていたことからプロジェクト担当者にご紹介いただき、参加に至りました。

——区長の推薦があっての参加だったのですね!今回提供されている「笄坂カレー」の特長はなんですか。

鈴木さん:笄(こうがい)は女性が髪を結い終わった後に使用していた髪飾りのことです。カレーも髪飾りのイメージに合わせて華やかにするために、お野菜をふんだんに使っています。

笄(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%84)より

——メニュー開発の際に苦労された点はありますか。

鈴木さん:先ほどと重なりますが、カレーは視覚的に茶色いルーの主張が激しいので、もう一歩食欲をそそるような一皿に仕上げようと野菜をふんだんに使っています。当店では「ワンプレートランチ」などでカレーにサラダを添えていますが、今回は食べやすくするために炒めた緑黄色野菜も追加でトッピングしました。

カレーソースや付け合わせの野菜にスパイスをたっぷり使っています。

鈴木さん:笄坂の標柱が目の前に立つお店を継いで8年になりますが、本プロジェクトに参加して初めて「笄坂」の意味を知りました。坂下に笄川が流れていたことが、このあたりの昔の地名や坂名の由来になっていると知り、非常に面白く感じました。

麻布は都心にありますが、歴史の深い坂道もたいへん多いです。ぜひ調べてから街歩きを楽しんでほしいですね。近所の西麻布の交差点も、旧地名から昔は「霞町(かすみちょう)」交差点と呼ばれていました。霞坂などもあり、昔の地名が街に息づいています。

当店のある西麻布エリアは六本木駅から徒歩10分、広尾駅からも徒歩10分と、少し不便なところですが、この不便さを楽しんでほしい。坂道が多く、自転車での移動は大変かもしれませんが、地名について調べながら歩くにはとってもおすすめです。

▼「霞坂カレー」についてはこちらの記事で紹介しています。
カラオケバーの間借りカレー店「HACHIYA curry西麻布店」——ステーキと彩り野菜の「霞坂カレー」をいただきました

西麻布の旧地名には笄町、霞町、桜田町、材木町、三軒家町があり、そのうち坂名として残っているのは霞坂と笄坂。どちらも麻布坂カレーで楽しめます。

ドラマ『孤独のグルメ』五郎さん絶賛の
インド版タルタルソース「ライタ」

——最近4月10日に放送されたドラマ『孤独のグルメ』で紹介されていた、「ライタ」とはどんな料理ですか。

鈴木さん:ヨーグルトに細かく刻んだ野菜とスパイスや塩を混ぜ込んだものです。イメージはタルタルソースのようにおかずと一緒に食べるもの。我々は“ヨーグルト”というと、デザート寄りに感じますよね。インドでは甘くなく、タンドリーチキンにつけて食べたり、カレーに混ぜたりと、カレーの味変のようにして使います。

『孤独のグルメ』で主人公の五郎さんがエビのグリルやカレーにライタをつけて食べていたので、よく注文されるようになりました。みなさん、ライタでカレーを食べるご経験がないので、やっぱり試してみたいという方が多いですね。最初のひと口は少し不思議な感覚ですが、非常に中毒性があります。

ドラマ撮影のため店舗に訪れた、孤独のグルメ原作者・久住 昌之(くすみ まさゆき)さんのイラスト付きサインを眺めていると、たくさんのワインのボトルが目に入りました。

鈴木さん:こちらはインドワインです。同じ産地の料理やドリンクは相性が良いともいうのでセレクトしています。

インドワインはまだ馴染みが薄いかもしれませんが、栽培と醸造を積み重ねてきた本格的なワインなのでしっかりとした美味しさがあります。例えば「スラ・ヴィンヤーズ」というワイナリーは、スタンフォード大学卒業後、シリコンバレーで働いていたラジーヴ・サマント氏が、カリフォルニア・ソノマの醸造家ケリー・ダムスキー氏を招き、故郷インドでワイン用ブドウの栽培を一から始めたそうです。

原作者の久住さんも、「孤独のグルメ」本編放送後の人気コーナー「ふらっとQusumi」でインドワインを飲んでいました。

太陽のロゴが印象的な「スラ・ヴィンヤーズ」のワイン。

ライタやインドワインとの相性抜群!
スパイス弾ける「笄坂カレー」

今回は特別に、笄坂カレーとライタを一緒に実食させていただけることになりました!
なんと、インドワイン「フラテッリ・セッテ」赤も試飲することに。

ブロッコリーやパプリカ、キーマカレーとサフランライスの彩り豊かな笄坂カレー。

いよいよカレーソースをいただきます。ひと口目は「予想以上にマイルド」。生クリームがかかったキーマカレーは、とろりとした口当たりで、ライスに添えられたパパドにつけると食感の違いも楽しめます。風味豊かなスパイスとひき肉の旨味が重なったソースは、サフランライスとの相性も抜群です。

炒めた野菜もおいしいですが、個人的にインディアンサラダの酸味とカレーの組み合わせがイチオシ。ドレッシングにはチリパウダーとレモンと塩のみを使っているそうで、ピクルスのような味わいです。

フラテッリ・セッテの赤ワインはどっしりとしたフルボディのワイン。コク深いキーマカレーによく合います。個人的に、カレーに赤ワインの組み合わせは初めての体験で、新鮮なハーモニーを味わうことができました。

カレーを美味しく食べるためのワイン、というよりもワインの美味しさを引き立てるキーマカレーという表現の方がピンとくるかも。

カレーライスを噛みしめていると、口の中でプチっと何かが弾けました。

——ライスに混ざっているつぶつぶは何ですか?

鈴木さん:これはホールスパイスです。スパイスを挽くと香りが飛んでしまうので、サフランライスにはホールの状態で混ぜています。シナモンやカルダモン、クローブが丸ごと使われていて香りが豊かでしょう?それと、実はお米は新潟のコシヒカリを使用しています。

もちもちとした馴染みのある食感にも納得です。弾けたクローブのピリッとした刺激がバターの風味と溶け合って口の中にふわりと広がります。

それでは気になるライタも実食!まずはそのまま。細かく刻まれたきゅうりや玉ねぎのしゃきしゃきとした食感とスパイスの組み合わせは非常に爽やか。

塩が入っているので「しょっぱいヨーグルトサラダ」のようなイメージ。

鈴木さん:ライタにもいろいろ種類があって、フルーツとスパイスの入ったフルーツライタもあります。スパイスは何にでも使える万能調味料。インドの方は、フルーツに酸味のあるスパイスをかけて食べるそうです。

次はインドのおせんべい「パパド」にライタをつけて一口。おつまみのような感覚で食べられ、程よい塩気でワインも進みます。

鈴木さんおすすめの、ライタとカレーのマリアージュにも挑戦。

最後はキーマカレーにライタをたっぷりと。カレーの角が取れ、よりまろやかになります。ライタの爽やかさとカレーのコクが驚くほどよく合います。

鈴木さん:タンドリーチキンもヨーグルトとスパイスを混ぜたソースにマリネして作っています。インド料理にはヨーグルトがたくさん使われているんですよ。

料理に使われているホールスパイスも見せていただきました。

鈴木さん:スパイスにもこだわっています。よりフレッシュな香りをお楽しみいただけるよう、スパイスはインドからホールの状態で仕入れ、そのまま料理に入れたり、お店で挽いて使ったりしています。

インドのスパイスとヨーグルトをさまざまな料理の形で味わい、現地を訪れたような気分になれました。お店の目の前に「笄坂」の標柱が立っているのも味わい深いです。

『孤独のグルメ』さながらに、街の空気やインド料理の魅力をじっくり味わえるお店でした。この記事が、来店や街歩きのきっかけになればうれしいです。

麻布坂カレーの提供店舗は30店を目指して拡大予定。現在公開している提供店舗の記事は本記事で一区切りとなりますが、今後の展開にも注目です。

ネオン看板の雰囲気から通り過ぎてしまいそうになりますが、実は本格的な北インド料理店。また訪れたいです。

インディアンレストラン西麻布 by KENBOKKE
住所:東京都港区西麻布4-11-28 麻布エンパイアマンション2F
時間:11:30~14:30(アラカルトL.O.14:00、ランチメニューL.O.14:15)、17:30~22:30(L.O.21:30)
定休日:日曜、祝日
アクセス:東京メトロ日比谷線・都営地下鉄大江戸線 六本木駅「1c出口」より徒歩10分
笄坂カレー:1,600円(税込)

前の記事

図書館併設「有栖川食堂」で麻布坂カレー開発の裏側に迫る——ドイツ文化に触れる「南部坂カレー」も実食