港区の坂・「蜀江坂」
2023年8月30日
紅葉の名所として知られる蜀江坂
白金を代表する名門校・聖心女子学院。この学校の西塀沿いに走る坂道が蜀江坂です。
坂を上り切った先にある紅葉が、「蜀江」の景観のように美しかったことが名前の由来とされています。
蜀江は長江の上流のこと
蜀江という言葉の「蜀」は、三国志で有名な三国の「蜀」のこと。「江」は、中国語で川を表します。
蜀の首都(現在の成都市)を流れる長江は、かつて大層美しい川だったそうです。
中国の詩人たちが、風景の美しさを例えるときに使う表現として蜀江は繰り返し使用されてきました。
ちなみに、この蜀江の水で糸を染めて織ったと伝わる古代中国の精巧な織物が奈良時代に日本にも入ってきています。当時の日本人はこの織物のことを「蜀江の錦」と呼びました。やがて、中国から入ってくる美しい織物全般のことを「蜀江の錦」「蜀錦」などと呼ぶようになりました。
平安時代になると、日本でも中国のように、花や紅葉の美しさを表す表現として、「蜀江(錦江)の錦」がしばしば使われるようになります。
つまり、かつて日本において「蜀江」という言葉は、「美しい紅葉」を指すときの定型文だったのです。
六本木は武家屋敷が集まるエリアでした。江戸時代の武士はとにかく古典文学を学びますので、こういった表現に落ち着くのも自然なことだったのかもしれません。
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