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【港区の商店会】目に見えない繋がりが、広い繋がりを生む――地域を導き、見守る「白金北里通り商店会」

2024年10月29日

北里大学研究所病院や聖心女子大学のそばに広がる、昭和レトロな歴史の名残を感じさせる、どこか懐かしくてあたたかい商店会――それが「白金北里通り商店会」です。

商店からコンビニエンスストア、美容室、飲食店、薬局、病院まで、商店会を構成しているのは多岐にわたる店舗の数々。「白金」と聞くと、高級そうなブランドイメージを連想しますが、この白金北里通り商店会は夏に阿波踊りなどを開催している、「庶民感覚あふれる親しみやすい商店街」(商店会公式サイトより)なのです。

ハロウィン当日(10/31)には、港区の白金・高輪エリアの7つの商店会が合同で行っている「T8ハロウィンプロジェクト」を開催。この白金北里通り商店会会長職を務め、商店街の1店舗「合資会社 佐藤栄次郎商店」を切り盛りする佐藤伸弘さんに、ハロウィン直前のこの時期にお話を伺いました。

白金北里通り商店会会長さん

白金北里通り商店会会長ほか、あまたの役職をこなされる佐藤伸弘さん

「白金に生まれた子供たちにとっては、この白金こそがふるさとです。私が子供の頃は、縁日に神社の宮司さんが白馬に乗って商店街を歩いたり、面白いイベントがありました。現代の子供たちが不公平だと感じないよう、ここがふるさとだと誇れるよう、地域を盛り上げていきたいと思います」

――「港区商店街振興組合連合会」副会長、港区選挙管理委員会委員長、警察の交通安全協会監査役員など多くの役職を兼務されている佐藤さん。地元の商店会をリードし続け、次世代を担う子供たちを見守る熱い想いについて迫りました。

「T8ハロウィン物語2024 in 白金・高輪」を支える地域の人々

T8ハロウィン

T8ハロウィン物語のパンフレット表紙(「T8 – Takanawa Eight -」公式Facebookより)。各会長さんも仮装中!

「T8ハロウィン物語2024 in 白金・高輪」は、子供たちが各商店会でプロジェクトに参加している対象店舗を訪ね、「トリックオアトリート」と合言葉を伝えると、お店の方からお菓子がもらえる仕組みです。

「もともと港区の商店会は、エリアごとにブロック分けされています。うちの商店会は白金・高輪ブロックに属していて、私はそのブロック長も務めています」と佐藤さん。

もともとは、白金・高輪エリアに属する8つの商店会で始めたプロジェクト。現在は高輪ゲートウェイ駅周辺の開発に伴い、「高輪泉岳寺前商店会」が一時的に休止中のため、ほかの7つの商店会で行っているそうです。

各商店会で今年配るお菓子は、なんと総額180万円分! 失礼ながら、その金額の出所について質問してみました。

「金額の2/3は、港区からの助成金を活用しています。あとの1/3は、各商店会で均等に割り当てて負担していますね」

地域の子供たちのため、区の制度が正しく活用されていました。

地元の信用金庫も協力

ハロウィンお菓子時間

商店会各店舗でのお菓子配布時間(「T8 – Takanawa Eight -」公式Facebookより。黄色枠が配布店舗)

お菓子を配る時間は、店舗によってさまざまです(黄色で印が付いた店舗で、お菓子を配布予定)。飲食店やサービス業のお店に混ざって、異彩を放っているのが芝信用金庫白金支店さん。金融機関では珍しく、商店会にも参加してくれて、ハロウィンプロジェクトにも協力してくれているそうです。

「昨年のことですが、お菓子を配布するのは15:00までとなっていましたが、それだと付近の子供たちの授業が終わる時間に間に合いませんでした。ご相談してみた結果、窓口を閉めた後、職員の方たちがキャッシュディスペンサー(現金自動引出機)の前で1時間待機してくださって、お菓子を配ってくれたことがあったんですよ」

shibashin

人情味あふれる「芝信用金庫白金支店」さん

子供たちのため、連携し合うサービス精神には頭が上がります。

「このT8ハロウィン物語は子供たちのためのイベントですから。お店に来てくれたのにお菓子がもうなくなっていると、子供たちががっかりしてしまいます。お店もそれぞれの事情があるので、数が尽きてしまうと『お菓子は終了しました』と張り紙を掲示することもあるんですが、キャンディ1個でも配ってあげた方が、子供たちも喜んでくれるんです。私の商店では、ハロウィンの日は必ず18:00まで店を開けるようにしてこといて、もしなくなったらお隣のコンビニエンスストア『ミニストップ』さんに駆け込み、お菓子を補充するんですよ(笑)。子供たちの目の前でカゴに開けて、『ここから持って行って』と」

こうした地域の大人たちの温かい想いに支えられ、子供たちはすくすくと育っていきます。

「ハロウィン当日は、子供たちの笑顔であふれる1日になれたらいいと思います!」

交流が地域活性化に貢献! 徳島・阿南市との絆

ガレージ物産展

白金北里通り商店会と徳島県阿南市によるコラボイベント「ガレージ物産展」(「白金北里通り商店会」公式Facebookより)

四国最先端に位置する徳島県南部の都市・阿南市と、強い結びつきがあるのも「白金北里通り商店会」の強みの1つ。毎年6月には、同商店会と阿南市のコラボレーションイベント「ガレージ物産展」を開催。昔ながらの店舗をガレージに見立て、「しいたけ侍」や「たけのこの水煮」「フィッシュカツ」など、阿南市の特産品がずらりと並び、大好評を博しています。両地の親交の深さは、まるで姉妹都市のよう。

史料によると、両地の交流が始まったのは2016年。「ガレージ物産展」の開催や「白金阿波踊り」での阿南市特産品PRブース出展など、具体的な交流事業が実施されたのは、翌2017年のことです。

「うちの『白金阿波踊り』イベントの際には、出店ブースのほか、阿南市から踊り子グループである『ささゆり連』が必ず出てくれます。反対に、阿南市のイベントでは、うちの商店会からPRブースや、ハンバーガー専門店「Burger Mania」さんの白金店が出店しました。こうした繋がりがあって、この近くには港区立の白金の丘学園(小中一貫校)があるのですが、そこで阿南市の特産品や素材を使った給食を出せたりします」

交流が生まれたきっかけや、日頃のご様子について伺いました。

「7月に阿波踊りを行っているので、徳島県の自治体と連携を図りたいなと考えていたんです。当時、港区で『特別区全国連携プロジェクト』を推進していて、その担当者に紹介されたのがきっかけです。その頃は、千代田区の日比谷公園内にある市政会館内に、阿南市の出張所があったんですよ。四国と言ったら、阿南市の出張所がありますよと。そこですぐに出張所に出かけて行き、阿南市にも出かけ、当時の市長にぜひ連携したいとお話しました。面会は当初10分だった予定が、当時の市長も大乗り気になって下さり、1時間近くも話し込んでしまいました(笑)」

佐藤さんのパワフルな行動力には驚かされます。

「阿南市とは、互いに有事の際は、サポートできる体制を取っておこうと提案したんです。先方の市長も大変喜んでくれました。阿南市は南海トラフ地震の脅威を抱えていますし、港区でも関東大震災が起きる可能性があります。そこで、何かあったら助け合おうという話になりました。地震や台風のニュースがあると、互いにLINEで『大丈夫だった?』とメッセージを送り合っています」

防災協定のような連携を図りつつ、常に互いに気遣い合えるのは、佐藤さんと先方のご担当者の優しさがあってこそと言えるでしょう。

親交を深め合い、今では家族ぐるみの仲に

阿南の岬

豊かな自然や海の幸に恵まれた徳島県阿南市

「今や、白金で阿南市を知らない人はいないんじゃないか?っていうくらい、その名は浸透していますね。阿南市からカブトムシの幼虫を分けてもらったときは、私が白金の丘学園に届け、子供たちにプレゼントしたりしています」

子供たちの情操教育にも、阿南市は貢献していました。

「阿南市のご担当者とは、家族ぐるみでお付き合いをさせていただいています。昨年、小学校3年生だった娘に稲刈りを体験させたくて、車で東京から阿南市へ向かいました。そうしたら、小さめの田畑で稲を手で刈り取る体験をした後に、機械のコンバインにも乗せてくれまして。娘も大喜びしていました。まるで本当の親戚のように、お土産をたくさん下さるんです。車で行かないと大変なことになります(笑)」

田舎の親御さんに会いにきたときのように、歓待された佐藤さんご一家。本当に、ご家族同士のお付き合いをされています!

「娘は稲刈りも楽しんでいましたし、カエルが跳ねている光景も珍しかったらしくて。ゆくゆくは、もっと多くの地域の子供たちを阿南市に連れて行けないか、いろいろと企画を練っているところです」

通行止めが実現するまで……白金阿波踊りの秘話

awaodori

子供と大人が一緒になって阿波踊りを披露する徳島県阿南市の「ささゆり連」

会場の公園内だけでなく、北里通りで練り歩き(阿波踊り演舞=流し)も行っているのが「白金阿波踊り」の大きな特徴。4年前から通りを一時的に通行止めにしできるようになったのですが、そこまでに至るには、紆余曲折があったと教えて下さいました。

「通りを止めるとなると、警察署の許可を取らなくてはいけません。はじめに高輪警察署にこの話を持ち込んだときは、何の実績もなかったので、残念ながらお断りされてしまいました」

地元の都議会議員の方にも相談したところ、「あの通りは3~5分に1回バスも通るし、封鎖するのはなかなか難しい」とアドバイスがあったそうです。

佐藤栄次郎商店さま

車やバスが頻繁に通る北里通り。「佐藤栄次郎商店」の正面には黄色い横断幕があり、子供たちや通行人に交通安全を啓発しています

紆余曲折があって、警察署からOKが出ると、他の関係各所にもどうにか承諾をもらえることに。バス通りで阿波踊りの練り歩きができるようになったものの、当時は片側車線だけだったと語ります。

「踊るそばから車やバスが通るので、危なくて仕方なかったですね」

その後、地元住民の方の発案により、この阿波踊りは地域で望んでいることだと警察に伝えるため、付近5つの町会長さんにも依頼し、実行委員会を設立。佐藤さんも、警察署や地元の方々と信頼関係を築いていくことに努めました。

「警察署や、警察関係の集まりにも足繫く通いました。警察の仕事や活動に対して、市民から意見を伝える『警察署協議会』の役員にもなりましたね。協議会の任期は2年で、2度まで務められるのですが、その縁がもとで、現在、交通安全協会の監査役員も務めることになりました」

こうした佐藤さんの努力が実を結び、約4年前から、北里通りを一時通行止めにすることに成功。今年も迫力ある圧巻のパフォーマンスで、観客たちを惹きつけていました。

地域内から地域外へ――広い繋がりを生み出す商店会

星野屋酒店

「星野屋酒店」さんは、創業100年を超える老舗店! レトロな外観と、お店の前にある米俵が存在感を放ちます

白金北里通り商店会には、震災で焼失を免れた、昔ながらの建物も残っています。昭和レトロな街並みを感じられ、歴史ある店舗も多数。創業100年を超える老舗の「星野屋酒店」さんのほか、佐藤さんが代表を務める「佐藤栄次郎商店」も創業98年と、由緒あるお店が並びます。

商店会の店舗数は70を超えており、まるで下町のような人情味を感じられます。「佐藤栄次郎商店」さんには、白金の丘学園などの生徒さんが、授業の一環で職業体験を訪れることもあるそうです。

「子供たちが帰る前、これで僕たちはもう知り合いだから、お店の前を通るときは挨拶をしてねって伝えていきます。すると子供たちも『はい』って、元気に挨拶をしてくれるようになります。この商店会が、子供たちにとって何かあったら駆け込める場所になれればいいなと思います」

互いを見守ることが子供たちの安全を守り、ひいては犯罪抑止へ。地域の人々のこうした取り組みで、治安は保たれています。そして、今や人々の繋がりは、地域内だけでなく他の地域へも広がっています。

「白金の丘学園は、台湾と交流があります。今年4月、台湾で大きな地震があった際に、子供たちの発案で先方に募金を送ることにしたんです。ただ、外国のため、送金する金融機関を通す必要がありました。そこで間に立ってくれたのが、ハロウィンプロジェクトにも協力してくれている芝信用金庫さんです。やはり、顔が見える人にお願いした方が、安心できますしね」

子供たちと地域の商店の結びつきが、やがて都外や海外へ。子供たちはいろいろな体験をもとに、自身で企画し行動することを学んでいきます。

「目に見えない繋がりが、広い繋がりをつくっていきます」――佐藤さんが培い、結んだ繋がりの精神は、地域の子供たちへ受け継がれ、これからも大きな笑顔を生んでいくのでしょう。

合資会社 佐藤栄次郎商店
住所:東京都港区白金6-6-3 ラ・ヴィエルジュ白金102
営業時間:平日7:30〜18:00/土曜9:00〜14:00
休業日:日曜日・祝祭日・年末年始等
アクセス:地下鉄南北線・三田線「白金高輪駅」より徒歩10分
地下鉄日比谷線「広尾駅」より徒歩10分

 

 

 

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