【芝浦一丁目再開発】芝浦一丁目地区 未来ビジョン検討キックオフミーティングへ参加しました!
浜松町駅前にある浜松町ビルディング(東芝ビルディング:東京都港区芝浦1-1-1)の建て替えを契機に、大規模な再開発が予定されている芝浦エリア。これからどのような形で町をつくりあげていくか。地区の回遊性向上と周辺地区との連携、地域資源の魅力向上、地域コミュニティの活性化、防災性の向上に寄与することを目的とし、野村不動産株式会社と東日本旅客鉄道株式会社が、地元町会や地域関係者、行政と共に設立した「芝浦一丁目地区まちづくり協議会」の活動です。
2024年4月23日、協議会のメンバーの改めての顔合わせと、これからの活動のタイムスケジュールを共有するための「芝浦一丁目地区 未来ビジョン検討 キックオフミーティング」が開催されました。今回、いざまち編集部もこのキックオフミーティングに参加することができましたので、これから芝浦エリアで、何が行われていくのかを報告いたします。
芝浦プロジェクトとは?
まず改めて、芝浦エリアの再開発である芝浦プロジェクトの概要をご紹介します。2021年10月から着工の始まった浜松町ビルディングの建て替え事業は、最終的にはツインタワーになる予定です。現在、工事が行われているのがS棟と呼ばれるタワーで、2025年2月に竣工する予定です。一方、現在残っている浜松町ビルディング部分も2027年から取り壊しが始まり、2030年度にはN棟として生まれ変わります。
このツインタワーは、低層階部分に大規模な商業施設が入り、その上にオフィススペースという計画。さらにS棟の上層部分はホテル、N棟の上層部分はレジデンス(住宅)が予定されており、浜松町駅周辺にこれまでにない人の流れが生まれることになります。
それまでの町と大きく変わるからこそ、芝浦で活動する企業や、芝浦に暮らす住民が、新たな町をどのような町にしていきたいかをきちんと話し合い、指針を共有していく必要があるのです。「芝浦一丁目地区まちづくり協議会」には、これからの芝浦エリアの未来の指針となるビジョンを策定することが期待されています。
「芝浦一丁目地区 未来ビジョン検討キックオフミーティング」は浜松町ビルディング29階のプロジェクトプレゼンルームで行われました。
今回は、キックオフミーティングということで、まず、メンバーそれぞれの紹介が行われた後、これから一年間かけて行われる「ワーキング」について説明されました。
話し合われるのは芝浦の未来にむけた4つの課題
芝浦一丁目地区まちづくり協議会の事務局を運営しながら、連携してエリアマネジメント活動を行っている「一般社団法人芝浦エリアマネジメント」により、まず最初に、これからの芝浦エリアを作っていくうえで重要となる課題が4つ設定されました。『親水空間の活用・魅力アップ』『歩いて楽しい通り・広場づくり』『芝浦らしい歴史・文化の継承』『環境に配慮したまちづくり』です。それぞれのテーマの詳細は以下のとおりです。
『親水空間の活用・魅力アップ』
芝浦エリアならではの特徴としてまず浮かぶのが、浜松町ビルディングの目の前も流れている「運河」の存在でしょう。地元住民へのアンケートでも、芝浦の象徴として名前の挙がるこの運河を、これからどのように活用して町づくりを行っていくかについて、検討をしていこうという課題。
『歩いて楽しい通り・広場づくり』
芝浦一丁目まちづくり協議会の設立目的にもある「地区の回遊性向上と周辺地区との連携」。新たに誕生するツインタワーの低層部もかなりの面積となる商業施設が入りますので、これまで以上にエリアを歩く機会が増えることが予想されます。訪問客も住民も使いやすい通りや広場を、どのようにつくりあげていくかを話し合います。
『芝浦らしい歴史・文化の継承』
芝浦といえば、漁師町としての歴史と伝統があるほか、江戸時代から続く行楽地であり、東京で初めて大規模港湾が作られた場所でもあります。こうした芝浦エリアの持つ歴史や文化を、新たな町の誕生で塗りつぶすのではなく、次の世代へ継承していく方法を検討する必要があります。
『環境に配慮したまちづくり』
これからの時代に欠かせないのが「持続可能な開発目標(SDGs)」という観点での都市開発です。新しい町を拓くにあたって我々大人が取り組むSDGsはもちろんですが、これから芝浦エリアで暮らしていく子どもたちに向けても、環境の保全をどのようにしていくかを伝えていく必要があります。
協議会のメンバーは、今後4つのワーキンググループに分かれ、各テーマについて学びなら、意見を出し合うことになります。最終的には、各ワーキンググループで出た結論をまとめることで、2025年3月に、これからの芝浦エリアを象徴する未来ビジョンとして発表を行うという流れです。
もちろん、地元の住民や企業が集まるだけでは、判断できないことも多々出てきます。そこで、今回ご協力を頂くことになったのが以下4名の専門家の先生です。各先生方は、今回のキックオフミーティング開催にあたり、芝浦エリアとはどういう場所なのかという、基本情報のインプットトークもしていただきました。
親水空間の活用・魅力アップについての専門家:陣内 秀信先生
法政大学名誉教授であり中央区立郷土資料館館長。専門は建築史で特にイタリアの建築と都市史について詳しい先生です。今回のインプットトークでも、ご自身がヴェネツィアに留学していた時代のお話から、水路を活用した都市計画は芝浦エリアでも可能ではないのかという、斬新な発想を披露していただきました。たしかに、同じ運河の町でありながら、ヴェネツィアと芝浦ではイメージが全然異なります。同じ、運河沿いの都市なのだから『日本のヴェニス』を芝浦に作ることも不可能ではない気がしてきますね。
歩いて楽しい通り・広場づくりについての専門家:篠原 聡子先生
建築家であり建築研究者。自身も作家活動を行いながら建築研究を行っていらっしゃいます。都市に「Core(核)」となる場所を設定した場合、その周辺にある「boder(境界)」「spot(地点)」「private(私的)」な空間をそれぞれデザインしていく必要もあるというお話は、最初はどういうことか、まるで分りませんでした。ですが、具体例として見せていただいた、アジアの都市や先生の建築作品の写真を拝見し、おぼろげながら理解できていました。町をデザインするうえで建物だけでなく、導線部の役割と、そこを利用する人の顔を思い浮かべておくことが住民の交流に繋がるというのは、「private(私的)」とパブリックを分ける「boder(境界)」=土間で、近所の方が集まっていた田舎の風景を見てきた身としては納得です。
芝浦らしい歴史・文化の継承についての専門家:太下 義之先生
同志社大学教授。文化政策研究者。さまざまな団体に評議員や理事として協力をされていらっしゃいます。協議会では、芝浦エリアの歴史・文化についてアドバイスをされるということで、今回のインプットトークでは、芝浦エリアの歴史・文化を簡単にレクチャーしていただきました。日本初のプロ野球チームが芝浦でできたことや、NHKが愛宕山でラジオ放送を開始するより早く芝浦で行われていたこと、関東大震災時にアメリカから送られてきた支援物資を受け入れきれなかったことが、芝浦に港を整備するきっかけになったことなど、「いざまち」のほうできちんと調査を行いたいような内容もたくさん教えていただきました。
環境に配慮したまちづくりについての専門家:上田 壮一先生
一般社団法人Think the Earth代表。コミュニケーションを通じて環境や社会について考え、行動するきっかけづくりを全国で続けていらっしゃいます。先日公表された『SDGsアクションブック みなとく 芝浦港南地区2021-2023』では、編集統括として、東京工業大学付属科学技術高等学校の生徒と3年間にわたり、地元の企業や団体をSDGsの観点で取材する活動をされていました。協議会ではなかなか聞けない、生の地元の子どもの声を拾いながらのワーキングになりそうなので、地域に暮らす住民の方の生の声を拾っていきたい我々としても、かなり興味深いワーキングになりそうです。
「いざまち」はこれからも芝浦プロジェクトを追いかけます
最後は、直近で行われるワーキングの日程と、これからのタイムスケジュールを確認し、今回のキックオフミーティングはお開きに。私もこれほどまでに大掛かりなエリア開発の最前線を見るのは初めてですが、協議会に参加されている、企業、住民、行政、専門家。いずれの方々もが今回の再開発を、非常に前向きにとらえていらっしゃるのが印象的でした。
これから芝浦エリアがどのように変わっていくか。そのビジョンが今年、芝浦一丁目地区まちづくり協議会の方々の努力により定められていきます。せっかく、このようにキックオフミーティングの段階からご縁を頂けたわけですから、いざまち編集部も、どのような活動を行いながら未来ビジョンが策定されていくのかを、適宜取材し報告させていただきたいと思っております。