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飲食、芸事、昼と夜……“七色の顔”を持つ街・赤坂!【赤坂一ツ木通り商店街】

2024年8月8日

「赤坂」といえば、TBSや国会議事堂、日枝神社など、さまざまなスポットが集中していますが、実は港区で最初に商店街が登場したのが、赤坂だとご存じでしたか? 飲食店が集まる赤坂ですが、実は飲食の街以外にも、さまざまな“顔”があるのが赤坂の魅力。
今回、「赤坂一ツ木通り商店街振興組合」の理事長・吉岡 聰一郎さんに、赤坂の過去、そして目指している赤坂の姿についてお話を伺いました!

赤坂一ツ木通り商店街振興会 理事長 吉岡 聰一郎さん
赤坂生まれ・赤坂育ち。宮内庁御用達を拝命した、うつわ・陶磁器のセレクトショップ「陶香堂」代表取締役。現在は「赤坂一ツ木通り商店街振興組合」の理事長をはじめ、赤坂がさらに発展することを目指して事業を行っている「茜共創プロジェクト」にも参加。

港区でいちばん古い、赤坂一ツ木通り商店街

東京メトロ千代田線「赤坂駅」2番出口を出てすぐ、赤坂通りと青山通りを結ぶ、一ツ木通り。両脇には、飲食店をはじめ多くの店舗が並びます。

「赤坂一ツ木通り商店街は、港区でいちばん古い商店街。明治の20年代に発足しました。当時から平成初期までは、物販店など日用品を扱うお店が連なる、みなさんがイメージする商店街でした。道路もいまは1車線ですが、40年前くらい前までは対面通行で、道幅ももう少し広かったんですよ」

1948(昭和23)年に青山から赤坂一ツ木通りに移転した「陶香堂」の店内で教えてくれた、吉岡さん。現在の風景しか知らない身としては、「赤坂ってそんな庶民派な街だったの?」と驚きます。

「街の風景が大きく変わったのは、バブル(1980年代後半~1990年代)以降ですよね。赤坂に限った話ではないと思いますが、商店をたたんでビルに建て替え、賃貸業にシフトしたお店が多くて。我々のように、いまも引き続き物販などの小売店業を続けているお店は、もう片手くらいしか残っていないかもしれません。
飲食店も、昔は大小合わせて100件くらいの料亭があったんです。ちょっと敷居が高いお店が多い街でしたが、バブル以降はいい意味でほぐれて、カジュアルなお店が増えましたね」

そして「ただ……」と続ける吉岡さん。

「物販店も多かった35~6年前、赤坂は“外から買い物に来る街”だったんです。お店もにぎわっていて、商店街の活気も肌で感じられて。春と秋には、ワゴンセールも開催していましたね。いまでも覚えてるんですけど、オレンジのワゴンでね。商店街の端から端まで、店先にずらっとワゴンが並ぶ光景は印象的で、忘れられません。
現在も外から来てくれる人は多いですが、物販より飲食がメインかな」

赤坂は格式ある街? 来やすい街?

「昔はお店と自宅が一緒だったんで、僕も中学生くらいまではここに住んでいました。子どもの頃は、学校から帰ってくると、一ツ木通りでキャッチボールして遊んでいたんです。で、夕方の5時くらいになると、黒塗りの車がバーッと入ってきて、街の様子がぐっと変わる。夜になって一気に雰囲気が変わる感覚は、よく覚えてますね」

活気ある商店街という昼の顔から、夕方を境に高級車が集まり、一瞬にして夜の顔の変わる赤坂。そのギャップも、赤坂の魅力のひとつだったのかもしれません。

赤坂周辺の歴史を紐解くと、江戸時代は大名屋敷が並ぶ地域でした。明治時代に陸軍の街となり、現在も国会議事堂や議員会館、首相官邸、赤坂御用地などがあります。錚々たる施設に囲まれた赤坂に、VIP御用達の料亭が多いというのも納得。
バブルを境に、飲食店の敷居が下がった理由って何でしょう?

「飲食店に限らず、いわゆるチェーン店が増えた、というのがあると思います。どちらがいい/悪いではないですが、“赤坂にしかないお店”がかなり少なくなってしまって。
TBSを背にして一ツ木通りを見た風景が象徴的かと思いますが、カフェ、ドラッグストア、カフェ……みたいな(笑)。そこに、相模屋さんという、明治から続くあんみつ屋さんもあったり。
昔から御贔屓にしてくれているお客さまに、“赤坂もほかの街と変わらない風景になっちゃったわねぇ”なんて言われたこともありますよ」

 

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「来やすい街になった反面、もっと格のあるお店が欲しい、とおっしゃる方もいますね(笑)」と、吉岡さん。確かに歴史を考えると、そう感じてしまう気持ちも分かりますよね。

実は下町気質で懐も深い! 赤坂の意外な一面

お話を伺っている途中、「赤坂ってみなさんのイメージは敷居が高くておしゃれ、というイメージがあるかもしれないですが、実はすごく下町気質な面もあるんです」という一言が。

「良くも悪くも噂がすぐ広まる、というのもありますが(笑)、たとえば、新しいお店ができたら、“行ってやってくれよ”と、宣伝を兼ねてちょっとしたおせっかいを働いたり。赤坂という街を選んで出店してくれたのがありがたい、誰でもウェルカムという懐の深さも持ち合わせている街でもありますね」

このように、街のほうから歩み寄ってくれるのは、新しくお店を出すオーナーさんも心強いはず!

「赤坂のお店は、個人オーナーが多いんです。そして、仲がいい。僕たちのように地元の人だけでなく、他のエリアから赤坂に出店してくれたオーナーさんも含めて、横のつながりは強いです。
新型コロナウイルスのパンデミック期間、飲食店が大変だったのはもちろんですが、行き場のない食材も多かったですよね。その時も、誰かが“うちの仕入れ先で行き場のない食材があって困ってる”と言うと、何人も手を挙げて、あっという間にさばけちゃったり。すごいなぁ、と胸が熱くなる光景でしたね」

飲食の街・赤坂、当時のダメージは計り知れません。そして「ちょっと話は逸れますが」と教えてくれた、皆さんの仲良しエピソード。

「コロナ禍でお店の営業が難しい時期がありました。日々忙しい飲食店のみなさんのなかには、空いた時間を利用して、ゴルフをはじめた人が多かったんですよ(笑)。そこで、せっかくだからコンペしようか、という話になりまして。
幹事の方たちが企画して、参加枠は10組。40人集まらないといけないんですが、声を掛けたら、すぐに埋まっちゃうんです。いまも年に2回開催してるんですけど、ゴルフコンペの日程だけは、みんな先々から押さえてるんですよ(笑)」

イベントを通じで地元のお店を発見してほしい

5月末に開催された「茜まつり」をはじめ、赤坂一帯ではさまざまなイベントが開催されています。実は茜まつりでいちばん来てほしいのは、地元の人だそう。

「もちろん、赤坂の外から人を呼ぶのも大切です。でも茜まつりの場合、いちばん来てほしいのは地元のみなさん。赤坂エリアって、タワーマンションが増えたことで住民は増加してるんです。でも、流入してきた人が赤坂を満喫しているかは、別。なので、茜まつりのようなイベントを、地元を知るきっかけにして欲しいですね」

確かに、ご近所さん付き合いも希薄なってしまった昨今、街の生の情報が欲しい場合、どこに問い合わせたらいいか、悩んでしまうかもしれません。

「地域のイベントだけでなく、赤坂氷川祭でお神輿を担ぐにはどこに問い合わせたらいいの? のような疑問を、“ここに問い合わせれば分かる!”というように、分かりやすくしてあげたいですね。そういった些細なことが、街の活性化にもつながると思うので」

関連記事:【赤坂氷川祭】江戸の祭を蘇らせる! 優美で壮麗な山車と豪壮な宮神輿の競演

芸と食の街・赤坂の芸者さんは、貴重な財産

「先ほどもお話しましたが、赤坂は、昼と夜の顔が違う街。いまでも、昼は赤坂で働いてる方々で活気があり、夜は赤坂以外から来る方で飲食店や居酒屋さんがにぎわうなど、時間により街の顔が違います。
もうひとつ赤坂を表わす言葉があって、それは、芸者さんに代表される、“芸と食の街”です」

 

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明治時代は軍人や政界人が集い、「東京六花街」のひとつとして賑わっていた赤坂。花街としての顔も長く、全盛期は1970(昭和45)年頃だったそう。

「料亭の数はかなり減ってしまいましたが、茜まつりをはじめ、イベントを開催する場合、やっぱり企画の目玉は、育子姐さんをはじめとする芸者さん。赤坂の芸者さんは、この街の財産です」

“育子姐さん”とは、2016年に花柳界ではじめて旭日双光章(芸術文化功労)を受章された、赤坂育子さんのこと。赤坂での芸能活動60周年を迎え、なんといまだ現役だそう!

 

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赤坂芸者衆絵巻」には、花街としての歴史や芸者衆の紹介をはじめ、さまざまな情報を掲載しています(公式インスタグラムでは芸者さんたちのお茶目な姿もアップされています)。

「芸者さんのイメージって、お座敷で踊ったりお酌をする姿だと思いますが、どんな踊りか想像できない人も多いと思います。なので、実際に踊っている姿を目の当たりにすると、老若男女問わず、必ずみなさん“すてき~!”と見惚れてしまうんです。
確か、イベントで芸者さんが踊る姿に憧れて、“芸者さんになりたい!”と、芸の道に足を踏み入れた人もいるんですよ」

赤坂氷川祭と同時期に、商店街でも「赤坂秋まつり」を開催

赤坂一ツ木通り商店街をはじめ、赤坂みすじ通り商店街、赤坂通り商店街、エスプラナード赤坂商店街の4つの商店街が共同で開催する「赤坂秋まつり」も、地元っ子が心待ちにするイベントのひとつ。

2023年「赤坂秋まつり」であいさつをする吉岡さん 画像提供:赤坂一ツ木通り商店街振興組合

「氷川祭に合わせて開催しているんですが、一ツ木通りを車両通行止めにして、ステージを設置してライブを開催したり、地元の飲食店にブースを出してもらったりしています。このイベントも、地元を知るきっかけになると思います」

赤坂秋まつりで地元赤坂グルメを堪能! 画像提供:赤坂一ツ木通り商店街振興組合

昨年は約30のブースが出展した、赤坂秋まつり。お酒はもちろん、ピザや焼き鳥、おでんなど、バラエティに富んだ赤坂グルメを楽しめます。地域密着のイベントを開催し続けることで、地元の方の認知度も高まってきている感じでしょうか?

「茜まつりも秋まつりも、“今年はいつやるの?”と声を掛けられることも多くなってきました。みなさん期待してくれているんだな、という実感はありますね。出店者が減少して規模が縮小した時期もありましたが、地道に継続してきた結果だと感じています」

今年は2024年9月13日(金)、14日(土)に開催される予定の秋まつり。もちろん、赤坂の芸者さんも登場します!

再開発を機に、赤坂を「広域にわたって回遊できる」街に

吉岡さんが赤坂一ツ木通り商店街の理事長を引き継いで約2年。商店街の活動以外にも、さまざまなプロジェクトで赤坂の街を盛り上げようと活動する吉岡さんに、この先、赤坂一ツ木通り商店街がどんな商店街になってほしいか聞いてみました。

「商店街だけで考えるのは難しくて、やっぱり赤坂の街全体になっちゃいますが……。いま、赤坂二丁目プロジェクト(2028年10月末竣工予定)と言う、赤坂駅の再開発をしているんです。大きなビルが建って赤坂駅も変わるので、さらに人が来る街になると思うんです。ただ、赤坂駅やTBS周辺が変わっても、こっち(赤坂見附駅)側が大きく変わるわけじゃない。
でも、赤坂駅に降り立った方々に、赤坂見附側まで足を伸ばして“買い回り”してほしい。だから僕は理事長として、“新しい人を迎え入れる準備”をしたいと思っているんです」

“新しい人を迎え入れる準備”とは?

「ひとつは、切望していた歩道と車道の整備。港区議の方々にずっとアピールしていて、やっと予算が付いたんです。まずは、赤坂見附の駅前とみすじ通りと一ツ木通り。時間はかかると思いますが、歩きやすい通りにしたいんです。ほかにもゴミを無くすとか、 “もう一度来たい”と思ってもらえる街にしたいんですよね」

赤坂駅から赤坂見附駅までは、歩いて10分もかからない距離。商店街のお店を見ながらお散歩するにはちょうどいい距離感です。

「一ツ木通り商店街だけでなく、いろいろな道を回遊して、新しい発見をしてほしいです。環境整備とか地味ですが(笑)、来てくれた方に気持ちよく過ごしてもらいたいですよね」

街の組織もシンプルに分かりやすく! 目標は赤坂のホールディングス化!?

環境整備をはじめ、縁の下の力持ち的に赤坂の活性化に努める吉岡さん。ただ、古くからお店が集まり賑わう赤坂だからこそのジレンマもあるよう。

「赤坂って、町会や商店会をはじめ、大小問わず地域に関連する組織が多いんですよ。赤坂を盛り上げたいというゴールは一緒でも、なかなか具体的に共有する場がないため、コミュニケーションが取れなくなってしまっている部分もある。だから、もっとシンプルな形態にしたいんです。企業のホールディングスのように、“赤坂”という傘下に、飲食店部門や物販店部門などをつくって、地元の企業にも参画をしてもらう。そうすると街の情報も伝わりやすく、お金の流れも可視化できますよね(笑)。
効率的な組織にして、みんながもっと街の活性化に注力できる環境づくりを手伝っていきたいです」

実は今回、吉岡さんに取材依頼をした時に「商店会の理事長さんってこんなにお若い方なんだ!」と驚いたのですが、お若い理事長さんだからこそ気づける改善ポイントをしっかりすくい上げているんだなぁ、と感じました。
それぞれの時代背景を受け止め、“街の顔”として反映できるのも、懐が深い赤坂だからこそ、なのかもしれません。

「いわゆる団塊の世代の諸先輩方もまだまだ元気で。新しい企画の相談をすると、ちょっと面倒なことを言われたりもするんですが(笑)、赤坂が好き、良くしたいという熱量は同じですし、衰え知らず。街のことを思っている、と伝われば快く協力してくれますし、同じ方向を向いているな、と実感しています」

そして「10年後は自分たちがその立場を引き継がなきゃいけない」と、吉岡さん。

お話を伺ってみて、赤坂一ツ木通り商店街をはじめ、赤坂エリアがこの先、どんな顔を見せてくれるか、楽しみになりました!
ちょっとだけお財布の紐に注意して、赤坂の街を買い回りする日が来るのも、遠くないかもしれないですね。

赤坂一ツ木通り商店街振興会

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