
「日本遺産」とは? 港区観光協会がオフィシャルパートナーになった理由を解説!
旅行好きでなくても多くの人が知っているであろう、「世界遺産」。世界遺産条約に基づき、 “人類共通の遺産”として、未来に引き継ぐべき地球上の有形遺産(文化/自然/複合遺産)が、世界遺産です。
しかし、実は日本には、「日本遺産」という制度があることをご存じでしょうか。そしてなんと、港区観光協会は2025年から日本遺産のオフィシャルパートナーになったのです。
▶参考:文化庁「日本遺産 ポータルサイト」
▶参考:港区観光協会「『日本遺産』の魅力発信! ~ゲートシティ港区の日本遺産認定に向けて~」
なぜ港区観光協会がオフィシャルパートナーになったのか、港区観光協会と日本遺産との関係について、ご紹介します!
「日本遺産(Japan Heritage)」とは?「モノ」ではなく「ストーリー」を重視
「日本遺産(Japan Heritage)」は、2015年より文化庁が推進している取り組み。知られざる日本の文化財や伝統文化を、地域活性化や観光振興に役立てるための制度です。
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日本遺産は、「有形・無形文化財を彩る、歴史的背景や地域に根差した伝承・風習などを踏まえたストーリー」を認定しています。つまり、遺産や文化財の背景にある、「その地域に根付いたストーリー(物語性)」に焦点が当てられている、という大きな特長があるのです。

日本遺産のパネルには、認定されたストーリーと文化財の由来が記載されています。
では、なぜ日本遺産は「ストーリー(物語性)」を重要視しているのでしょうか。
歴史的に貴重な建築や文化財などが重要文化財に指定された場合、その目的は「保存」に重きが置かれがちです。ただし保存だけでは、それらがどのように生まれ、なぜ長きにわたり大切に受け継がれてきたか、その背景や地域との関係性・貢献度が伝わり切らない場合もあるのです。
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ひとつの文化財のクオリティや伝統のユニークさだけでなく、それらに関連するバックボーンまで深く知ることで、よりその文化や風習の魅力を理解できるというもの。
日本各地の建造物や文化財、風習とともに、背後にあるストーリーを“見える化”することで地域振興に貢献し、未来への架け橋となる。それが「日本遺産」なのです。
高尾山にお遍路、忍者まで! 日本遺産の認定ストーリーは多彩
2025年時点で日本遺産に認定されているストーリーは、104。ちなみに東京都にも、日本遺産に認定されているストーリーがあります。それは、高尾山(東京都唯一の日本遺産です)。
絹産業を基盤に「桑都」と称された八王子は、北条氏照が居城を築き、高尾山を厚く信仰していました。現在も、高尾山は信仰とともに自然が守られ、四季を問わず人気のスポットです。

四国遍路では、各札所の山門の近くに日本遺産であることを示すプレートがありましたよ。
ほか、日本遺産に認定されているストーリーは、弘法大師空海ゆかりの札所(寺)を巡り四国4県を全周する世界的にも珍しい回遊型巡礼の「四国遍路」、アニメや映画などを通じて世界中の注目を集める、謎に満ちた「伊賀・甲賀の忍者」を起源にした今も残る風習など。
このように、ストーリーを認定する日本遺産は、複数の市町村にまたがって登録されるケースがあるのもひとつの特徴です。
港区観光協会が日本遺産のオフィシャルパートナーになった理由は?

増上寺と東京タワー
「いざまち」でも港区の知られざる姿や歴史をご紹介していますが、港区は歴史と文化が根付く場所。
浄土宗の大本山でもあり、江戸幕府を開いた徳川家康との所縁も深い「三縁山増上寺」、同じく徳川幕府から篤い保護を受け、関東のお伊勢さまと階級を問わず信仰を集めた「芝大神宮」、外国文化と和の融合を体現する国宝「迎賓館赤坂離宮」など、港区はさまざまなストーリーを持つスポットが集まった場所なのです。
▼迎賓館赤坂離宮についてはこちらの記事で紹介しています
赤坂にそびえ立つ宮殿……迎賓館赤坂離宮
しかし、多くの見どころがある港区。日本遺産の認定に向けて、どのスポットを中心としたストーリーを描くのか、また、地域や行政との連携などさまざまな課題もあります。
加えて、「日本遺産」の認知度アップも重要課題。やはり、「世界遺産は知ってるけど、日本遺産なんてあるんだ!」という声が上がるのも現実なのです。
なので、まずは港区観光協会が日本遺産のオフィシャルパートナーとなり、日本遺産の認知度アップに貢献する。そして将来的には、港区ならではのストーリーで東京23区初となる日本遺産認定を目指す、という想いが込められた、オフィシャルパートナーなのです。
港区のストーリーを知るための企画も多数!貴重な文化財は身近なところにあるかも……?
ご紹介したように、文化財とストーリー、どちらも重要視するのが日本遺産です。日本遺産認定を目標にしている港区観光協会をはじめ、港区ではさまざまなストーリーを知ることができる企画が多数用意されています。
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たとえば、先日お邪魔した「練塀勉強会」や「みなとく 防災・観光×イラストさんぽ」など。もちろん、増上寺が所蔵する「三大蔵」も、壮大なストーリーがある文化財です(このメディア「いざまち」も、港区のスポット紹介だけでなく、地域の方の人となりや背景・歴史をご紹介したいと思っています!)。
▼「練塀勉強会」「イラストさんぽ」「三大蔵」についてはこちらの記事で紹介しています
【行ってきました!】港区の歴史とともに、歴史遺産「練塀」について知ろう「練塀勉強会vol.4」
【行ってきました!】芝公園・増上寺など港区の名所と防災スポットをめぐる「みなとく 防災・観光×イラストさんぽ」
増上寺の「三大蔵」がユネスコ「世界の記憶」に登録! 徳川家の菩提寺に眠る、歴史的資料群
2025年3月にまちびらきした「高輪ゲートウェイ」も、かつて高輪は江戸の玄関口であり、大きな関所が設けられていたことから「ゲートウェイ」という名称になったのも、港区のストーリーのひとつ。
再開発などで街の姿は変わってゆくかもしれませんが、引き継ぐべきストーリーはたくさんあり、私たちの日常と地続きの存在。日本遺産は、そんな「身近にある文化の価値」を再発見する、ひとつのきっかけになるかもしれません。
▶参考:一般社団法人 日本遺産普及協会
日本遺産ファンクラブによる、日本遺産の魅力を紹介する無料オンラインイベント「日本遺産よりみちカフェ」などに参加してみるのもおすすめですよ。