
芝公園を楽しむヒントが満載! 2028年大河ドラマで注目のジョン万次郎と港区の意外なつながりも|練塀勉強会vol.9
2026年6月14日に増上寺の慈雲閣で開催された「第9回練塀勉強会」。
廣度院の国登録有形文化財「練塀」をもっとよく知るためにはじまった勉強会ですが、毎回さまざまなテーマを通して芝大門・芝公園エリアの歴史や文化を学べるのも大きな魅力。今回も盛りだくさんの内容でした。

会場は増上寺の黒門を入ってすぐ左にある慈雲閣
城好きにもおすすめ!? 日本で最初の公園「芝公園」の見どころは?
2026年で開園153年の都立芝公園について教えてくれたのは、芝公園サービスセンター長の鈴木得史さん。
「芝公園のイメージは“東京タワーのふもとにある公園”ですよね。私たちも、写真を撮る際は、東京タワーを入れることが多いです(笑)」と言うと、みなさんも「ですよね!」と納得の表情。

芝公園といえば、広い芝生+東京タワーですよね
明治6(1873)年、上野公園など4つの日本で最初の公園が指定されましたが、そのうちの1つが芝公園です。芝公園は、増上寺を中心としたドーナツ型の広大な公園。1~25号地までの区分けがあり、それぞれの区画には、増上寺や東京タワー、東京プリンスホテルなど、港区のランドマークが含まれています。園内には6世紀後半に築造されたと言われる「芝丸山古墳」や、縄文時代の遺跡である「丸山貝塚」などもあるんですよ。

芝丸山古墳
「1号地には『梅園』、19号地には『もみじ谷』、17号地にハスが生息している『弁天池』があります。当時はもみじ谷から渓流が流れ、弁天池を通って現在『野球場兼競技場』がある16号地の先にある古川に流れ込んでいました。当時の芝公園は木々が青々と生い茂っていて、昭和の時代になってもうっそうとしていたようですね」

『東京景色写真版』,江木商店,[明26?]. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/764109 (参照 2026-06-15)
▼芝公園17号地にある宝珠院でも、ご住職が在りし日の姿を語ってくれています
徳川家康公の念持仏を民衆に開放! 東京タワーのふもとにある“開かれたお寺” 宝珠院
芝公園は、「石」「渓流」に注目して楽しむのが面白い?
「4号地に巨大な石があるのはご存じですか?」という鈴木さん。芝公園は「石」に注目して楽しむこともできる、という新しい目線を教えてくれました。ちなみに4号地にある巨石は、なんとお台場の砲台跡(台場跡)の石垣に使われていたものだそう。
そして、19号地のもみじ谷は、芝公園に流れる渓流のスタート地点でもあります。さらに、江戸時代の刻印がされている石もあるのも、19号地。江戸城をはじめ、各藩主は幕府のために石垣の石などを用意していましたが、それぞれの石には、どの藩が用意したか分かるように、藩ごとに刻印していました。なんともみじ谷の石には、浅野家や島津家などの印が刻まれた石もあるとのこと!
渓流を楽しみつつ、刻印が刻まれた石を探してみたくなるエピソードです(各大名の刻印があるのも、遊びに来ていた方から「落書きされてる石がありますよ」という連絡を受けて判明したそう!)。

19号地のもみじ谷の渓流。特徴的な石はどこにある?
ちなみに、芝東照宮のすぐお隣、1号地には卍の刻印がある石があるとのこと。宝探し気分で、こちらもぜひ探してみましょう!
増上寺と港区役所の間・松原にある「おもてなしの庭」
増上寺の東側、日比谷通りを挟んで港区役所方面へ向かった場所にある「松原」と呼ばれるエリアも芝公園の敷地。なかでも廣度院から御成門駅の間、芝公園の6号地にある「おもてなしの庭」は、新旧の造園を楽しめるエリアです。

はなやぎの庭には、龍の姿を竹で表現した長さ19メートルの「臥龍垣」も
「東京五輪に合わせて作られたのが『おもてなしの庭』です。廣度院さんと港区役所の間にあるのが、若手の造園師さんによる和風モダンな『はなやぎの庭』、区役所から御成門駅の間にあるのは、江戸から続く伝統技巧を凝らした『逍遥の庭』です。
逍遥の庭には、高さの違う3つの覗き窓もあります。子どもでも楽しめる高さに設置された窓もあるので、ポストカードのように切り取られた日本庭園の姿を、親子で堪能しましょう。

逍遥の庭の3つの覗き窓。それぞれどんな景色が見えるでしょうか?
もみじ谷から弁天池の水流をはじめ、各号地でそれぞれの楽しみ方ができる芝公園。「アートを発掘するように楽しめる公園になれば」という鈴木さんの言葉通り、知ることで、新しい楽しみ方ができそうです。

はなやぎの庭と逍遥の庭の間にある庭門
2028年大河ドラマ「ジョン万」の主人公・ジョン万次郎と港区のつながりとは?
そして、芝公園の10号地にある、万延元年遣米使節団記念碑とペルリ提督像もしっかりチェックしておきたい場所。現在の高知県で生まれたジョン万次郎(中浜万次郎)は、実は遣米使節団の通訳として、港区からアメリカに出発したことがあるんです。

ペルリ提督の像のすぐ向かいにある、万延元年遣米使節団記念碑
「ご存じない方は帰りに見ていただきたいのですが、増上寺・三解脱門の目の前、松原の一角が芝公園の10号地にあるのが、『ペルリ提督像(ペリー像)』と『万延元年遣米使節団』の記念碑です」と、ジョン万次郎と港区のつながりを教えてくれたのは、港区観光大使でもある澤内隆先生。

「地理とは地域理解」と、澤内先生。芝大門エリアのことは芝ッ地理ちゃんにおかませ!
「松原にあるペルリ提督像は、我々が教科書で見ていた顔とだいぶ違います。これは、この像が彼の生まれた米国ニューポートで作られた、若い頃の顔だからですね」というトリビアも。

「若かりし日のペリーはイケメンですね!」と、澤内先生。
万延元年遣米使節団とは、万延元(1860)年に日米修好通商条約の同意書交換のために派遣された76人の使節団。その使節団が乗船するアメリカ軍艦の随行船として同行したのが、日本の軍艦「咸臨丸(かいりんまる)」です。96名が乗船していた咸臨丸ですが、中でも注目したいのは、以下の3人。
・勝海舟(指揮官)
・ジョン万次郎(教授・通訳)
・福沢諭吉(従者)

田中一貞 編『万延元年遣米使節図録』,田中一貞,1920. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1920856 (参照 2026-06-15)
でも、ペルリ(ペリー)が黒船で日本にやってきたのは浦賀です。アメリカに行くような大きな船は横浜や浦賀から出るのでは? と不思議に思うかもしれません。
実は、万延元年遣米使節団が出発したのは、増上寺のすぐ近く、現在の竹芝エリア。記念碑の解説文に記載された詠にも、しっかり「竹芝」の文字があります。

「竹芝の 浦波遠く こぎ出でて 世に珍しき 船出なりけり」という詠にも注目です
「当時の竹芝は遠浅の海だったので、沖に停泊している軍艦まで移動したんですね」と、澤内先生。ちなみに、記念碑にある「芝浦の裏」は、現在のレインボーブリッジあたりだそうですよ!

勝やジョン万、福沢もこのあたりから出発した?
港区は、歴史の節々に関わっている場所。
幕末、勝海舟が西郷隆盛と江戸城無血開城について語り合ったとされる愛宕神社をはじめ、無血開城の記念碑はJR田町駅周辺にあります。また、勝は港区赤坂に居住していたこともありました。そして福沢諭吉が私塾を発展させて創設した慶應義塾大学も、港区三田です。
▼愛宕神社についてはこちらの記事でも紹介しています
愛宕神社は「江戸と空が繋がる場所」虎ノ門の再開発で変わる街と、語り継がれる歴史
ジョン万次郎は港区に定住したわけではありませんが、幼き日、遭難して辿り着いたのは、八丈島よりさらに先にある、伊豆諸島の無人島「鳥島」。現在の鳥島は無人島で、一般の旅行者が足を踏み入れることはできませんが、伊豆諸島へは竹芝ふ頭から定期船が出ているため、ジョン万次郎ゆかりの海域へ思いを馳せることができるかもしれませんね。

鳥島は特別天然記念物であるアホウドリの繁殖地としても知られています
思わず探してしまうかも? デザインに富む京都の瓦土塀
練塀勉強会では、芝大門エリアの歴史だけでなく、練塀や土塀の発見につながるパートも用意されています。教えてくれるのは、廣度院の練塀だけでなく、多くの文化財建造物修復や史跡整備などに携わり、土塀の研究もされている、京都美術工芸大学 教授・井上年和先生です。今回のテーマは、「京都の瓦土塀」について。
「最近は土塀ないかなぁ、って考えながら歩いているんですよ(笑)」と、会場を和ませながら、写真をメインに、京都のさまざまな場所にある特徴的な瓦土塀を、分かりやすく教えてくれました。
土などで作られる土塀でデザイン性を求めるのは難しいだろうな、と思い込んでいましたが、井上先生が見せてくれた画像には、瓦の色や形などを上手に生かし、想像以上に動きのあるデザインが特徴的な瓦土塀の数々!
屋根に使われる屋根瓦や磚瓦(せんがわら)だけでなく、装飾のための丸い鳥衾瓦(とりぶすまかわら)など、多彩な瓦が使われており、「京都北区の大徳寺さんの瓦土塀は意匠を凝らしたデザインでオシャレ」と、井上先生。
右京区の鹿王院の山門の両脇もデザイン性のある瓦土塀。実際に鹿王院の公式Instagramでも、その特徴的な瓦土塀が登場していますよ。
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ちなみに、瓦土塀は下の方が瓦が密になっていることもありますが、これは水はけをよくするためだそう。いろいろ教えてもらうと、井上先生と同じく、古くから残る塀を探してしまいそうです。
今後は一般社団法人として保存・周知活動を! 一般社団法人 練塀文化普及協会
廣度院の国登録有形文化財である「練塀」の理解を深め、芝大門地域の文化再発見につながる活動を続けている練塀保存委員会ですが、2026年5月25日からは「一般社団法人 練塀文化普及協会」として新たな一歩を踏み出します。

廣度院の副住職・西城千珠さん(一番左)と練塀勉強会を支えるみなさん
引き続き3カ月に1回「練塀勉強会」を開催するのはもちろん、さまざまな活動を通して、芝公園エリアの歴史や魅力をひも解きながら、文化財として登録されている廣度院表門及び練塀の保存・周知活動を行います。
重要文化財でもある「江戸城造営関係資料」と同じ特徴を持つ廣度院の練塀は、文化財としての高い価値だけでなく、在りし日の増上寺周辺の姿を今に残す、大切な存在。
▼廣度院についてはこちらの記事で紹介しています
増上寺のすぐ目の前! 増上寺と同時に開山した「廣度院」は情報密度の高いお寺
芝大門周辺の歴史や魅力を知ることができる「練塀勉強会」、次回は2026年9月13日(日)に開催予定なので、興味のある方はぜひ参加してみてはいかがでしょうか?
【練塀勉強会】
vol.10予定:2026年9月13日(日)15:00~17:00
申し込みは廣度院公式サイト(https://neribei.jp/)でご確認ください

