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【行ってきました!】 先生トリオと歩く! 芝・増上寺の練塀ミニ巡検レポート|東京文化財ウィーク

2025年10月28日

さまざまな文化財を身近に感じられる「東京文化財ウィーク」。文化の秋にちなんで、毎年10月から11月にかけて開催されています。港区では、2025年11月1日(土)〜3日(月・祝)に開催される明治学院大学の学園祭「白金祭」で学園内にある歴史的建造物が特別公開なども。

そして、いざまちでもたびたびお邪魔している、増上寺山内最古の塔頭寺院である廣度院でも、特別企画を開催。というわけで、今回もお邪魔してきました!

練塀作りを体験できる! が、あいにくのお天気……でも訪れる方多数!

お邪魔した日はしとしとした雨が数日降り続いており、残念ながら空模様はぐずつき気味。そのため、文化財登録もされている廣度院の練塀(土と瓦を交互に積み重ねた土塀の一種)を参考に、練塀作りを体験できる予定でしたが、残念ながら中止に……。残念ですが、誰のせいでもないので仕方ないですよね。

▼廣度院の歴史や練塀については、こちらの記事でも紹介しています
増上寺のすぐ目の前! 増上寺と同時に開山した「廣度院」は情報密度の高いお寺

「2024年の文化財ウィークは天気が良くて、増上寺に行く人たちも、もっと多かったんですよ」と、教えてくれたのは、廣度院とコラボ甘酒の販売もしている、「甘酒・雑貨かふぇ こめどりーみんぐ」の松本さんと吉田さん。“飲む点滴”とも言われる甘酒で、無病息災の願いを込めて、廣度院でもコラボ甘酒を販売していました。

画像提供:こめどりーみんぐ

▼こめどりーみんぐについては、こちらの記事でも紹介しています
まるでアイスショコラ!? 実は夏の飲み物“飲む点滴”甘酒の魅力を発信する「甘酒・雑貨かふぇ こめどりーみんぐ」

どんより曇り空+増上寺の象徴ともいえる三解脱門も大修理中でしたが、ボランティアの方々の声かけもあり、廣度院の境内に足を踏み入れる人も多く、譲り合って本堂を見学をするような時間も。

副住職の西城千珠さんが廣度院や文化財でもある練塀について説明すると、うなずきながらとても興味深そうに聞き入っていらっしゃる方々が印象的でした。ボランティアの方もとても知識豊富で、いろいろ解説してくださいましたよ(私も廣度院の薬医門について教えてもらいました!)。

ご本尊の阿弥陀如来様。

ちなみにこの日は、同日に開催される講座の先生方3名も本堂にいらっしゃり、副住職+トリプル先生の解説を聞けるなんて貴重な体験をされた方も! 廣度院の紹介パンフレットには英語版の用意もあるので、興味深そうに本堂に足を踏み入れる外国人の方や、こめどりーみんぐさんが販売する甘酒を初体験されるツーリストの方もいらっしゃいました。

コアな解説をもサラウンドで聞ける! 社会+伝統建築研究の先生と一緒にまち歩き

この日の特別企画のひとつは、「『練塀』ミニ巡検 ~芝・増上寺エリアの「新・旧練塀」をTAKA-SHIコンビが巡検~」。

TAKA-SHIコンビとは、練塀勉強会でもおなじみのお二人。港区観光大使でもある澤内隆先生と、廣度院練塀保存委員会の山本高史先生です。実はお二人とも社会科の先生。社会の先生に解説してもらいながら、練塀や増上寺境内を巡る、約1時間のミニ巡検です。
そしてなんと今回は、午前中に「江戸の練塀」講座を開催されていた、京都美術工芸大学教授の井上年和先生も参加。豪華解説陣です!

「目的をもって回ることが巡見。目的を忘れずに行きましょう」という山本先生のひと言で、街あるきスタートです。

まずは、増上寺の目の前にある松原から。松の面影がないのになぜ「松原」? と思いますが、かつて松が植えられたことに由来しています。名称が歴史を伝えているんですね。松原で見逃せないのは、若き庭師たちにより作られた「臥龍垣」。64本の竹をつなぎ合わせており、ダイナミックな龍がうねる姿を彷彿とさせます。

日比谷通りを渡って増上寺境内に足を踏み入れてすぐの場所にあるのが、増上寺の鬼門を守る熊野神社です。ちなみに呼び方は「くまの」ではなく「ゆや」。当て字だとしてもだいぶ……と思っていると、「“湯屋”と書きます。現在の熊野地方に火山はないですが、温泉はたくさんありますよね」と、澤内先生がしっかり説明してくれました。

「なぜ“ゆや”と呼ばれているのかは、熊野カルデラに由来しているんです。熊野カルデラは大昔の大爆発によってできたのですが、現在もそのマグマの熱が地熱源になっています。だから熊野周辺は、火山がなくても温泉が沸く。そこから“湯屋”と言われるようになったんですね」

増上寺大殿だけでなく、しっかり拝見しておきたい2つの見どころ

小雨が降る中でも三解脱門が修理中でも、多くの人でにぎわう増上寺大殿。

ですが、大殿だけでなく、しっかり見ておきたいものが近くに2つあります。

ひとつは15tもの重さの大梵鐘。江戸で鋳造された梵鐘で最も古いものだそう。高さ3.3m、直径1.8mと巨大な大梵鐘。突くときも数人がかりだそうですよ。

「鉄なのに戦争で持っていかれなかったの……?」
「重すぎて持っていけなかったんですね」
「あぁ~」

武器生産に必要な金属資源を補うため、金属類回収令が公布された戦時中。「重すぎて持っていけなかった」というシンプルな回答を聞いて、余計なことをせず考えすぎないことってやっぱり大事なんだなぁ……と妙に納得してしまいました。

そして見逃せないもう1つのポイントが、「増上寺のカヤの木」です。

「ここまで来る人はほとんどいない」と澤内先生が言う通り、え? この道通れるんですか……? という細い道を歩いていくと(廣度院の副住職も「こんなところに道あったの?」と驚いていました!)、立派な1本のカヤの木が。

樹齢600年を超える周囲約4mの巨木は、港区の天然記念物でもあります。増上寺が建立される前から、この地に自生していたと考えられているそう。カヤは硬く仏像を作るのに適した木とのことですが、この木についてはいっさい記録に残っておらず、なぜここにあるのか謎とのことです。

暖帯の植物であるカヤにとって、港区は自生の北限に近い場所。そんな場所でも、とても力強く空に伸びていて、生命力に溢れていました。

三解脱門の向かって左にある黒門、何の黒?

画像提供:廣度院練塀保存委員会

正式名称は「増上寺旧方丈門」ですが、「黒門」とも呼ばれています。建立当時は全体が黒漆で塗られていたため、「黒門」と呼ばれるようになったとのこと。現在は漆塗装がはがれてしまい、木肌が見えている部分もありますが、「あの辺りはまだ漆が残っているかも⁉」と、全員で漆探し。

「漆は何重にも塗り重ねて磨いたり、大変な作業なんですよ。漆を塗ると木の呼吸が妨げられてしまうので、扱いも難しいんです」と井上先生。

貴重な漆を幾重にも重ねた艶のある漆黒の門、見てみたかったなぁ……。美しかったでしょうね。

小雨に降られながらのミニ巡検、参加された方もみなさん大満足されていらっしゃいました。新聞の折り込みチラシを見て参加されたり、午前中にボランティアさんに声を掛けられて一度は離れたけど「やっぱり参加したい!」と戻られた方も!

私も、芝・増上寺周辺にはまだまだ知らないことがたくさんある! と実感した時間でした。

廣度院の練塀内部公開は、11月1日(土)~3(月・祝)にも開催され、特別講演も開催されます。ミニ巡検も、11月2日(日)に開催されますよ。

スタンプラリーに参加すると、オリジナルのポストカードももらえるので、3連休のお出かけにいかがでしょうか?(晴れて暖かくなるといいなぁ……)

【東京文化財ウィーク2025】
・【廣度院】東京文化財ウィーク2025特別企画 10月26日(土)〜11月3日(月)開催
・東京文化財ウィーク情報

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