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子どもたちに腹話術の楽しさを――8月25日に腹話術体験会を開くNPO法人COMEDY BOXとは?

2025年8月24日

腹話術に初めて触れた時のことを覚えていますか? はっきりした記憶はなくても、テレビ番組『笑点』などで見たことがある、という方は多いのではないでしょうか。
ただ、いっこく堂さんをはじめてテレビで見た時の衝撃は鮮明に覚えています。番組放送翌日の小学校では、腹話術を真似する子であふれていました。
腹話術は特別な道具を必要とせず、体ひとつでできるシンプルな芸。子どもでも挑戦しやすい魅力があります。
そんな腹話術を子どもたちに体験してもらうイベント「第1回 妙善寺こども会 ~みんなで腹話術にチャレンジ~が、8月25日(月)、六本木・妙善寺で開催されます。このイベントを主催するNPO法人COMEDY BOXさんにお話を伺いました。

COMEDY BOXが広げたいのは「腹話術の学び場」と「発表の場」

お話を伺ったのは、特定非営利活動法人COMEDY BOX(コメディーボックス、以下NPO法人COMEDEY BOX)理事長の中西けい子(スージィー)さんと、理事の井口健司(ジィーニー)さん。お二人は現役の腹話術師(一般社団法人東京演芸協会会員)として寄席に立つ芸人でもあります。

NPO法人COMEDY BOX主催のワークショップ参加者

ところで、NPO法人COMEDY BOXとはどのような団体なのでしょうか。するとスージィーさんは、とても興味深いお話を聞かせてくださいました。

「2023年8月18日の午後に“ NPO法人を作りなさいという神様からのお告げがありました。NPO法人なんてまるで興味もありませんでしたし、なんでそんなことが頭に浮かんだのかも全くわかりません。あまりにも不思議だったので、NPOを作れって言われたけどNPOって創るの大変ですよね?とジィーニーに聞いたら、そんな難しくないですよ、作りましょう!!と言ったんです」

ジィーニーさんは

「私は6年位前に、スージィーさんのカルチャースクール教室に参加していました。当時はまだ芸人ではなく、日本ブラインドサッカー協会というNPO団体で働いていて、その設立に関わっていた経験があったんです

とジィーニーさん。ブラインドサッカーとは、目の不自由な方が行うサッカーのこと。鈴を入れたボールを使い音を頼りにプレイします。普段から音を頼りに暮らしている盲人の方々がプロ顔負けのパス回しを披露してくれるため、観戦していて手に汗握るスポーツです。ボールが遠くに転がりすぎないよう、コートをフェンスで囲んでいることも特徴。壁の跳ね返りを利用したパス回しは、ブラインドサッカーならではです。

実は、筆者も以前ブラインドサッカーの試合を見せてもらった経験があり。そのプレーのすさまじさに圧倒された一人。まさか、団体設立にかかわっていた方に、こんなところで出会うなんて。

元が「お告げ」ですから、NPO法人という箱を作った所で何をするのかがまるで決まっていませんでした。スージィーさんとジィーニーさんは、いったい何を目的に活動をするのかを念入りに話し合うことになりました。

「でもね、最初の打ち合わせの時に、ジィーニーが物凄くしっかりとした活動指針の原案を作って持ってきてくれたんです」

そこに書かれていた案は、スージィさんがぼんやりと浮かべていた考えと一致していたそうです。

「私自身、個人の活動としてカルチャースクールで生徒さんに腹話術の技術を伝えるという活動はしていたのですが、個人で教えられる人数や時間には限界がありました。全国にいる腹話術仲間を募って、みんなで技術を学び研鑽していく場が作れればよいなというのはずっと考えていたんです

かつてスージィさんは、腹話術師の技術を学びにアメリカへ渡ったことがあるそうです。

「アメリカの研修で向こうで日本の腹話術とは全く違う系統の技術を学び、意気揚々と帰国しました。ですが、当時の日本の腹話術業界はアメリカの技術を受け入れてくれる場所がありませんでした。上演できる場所がなかったので、私は独立して活動するしかなくなりました。独りぼっちになったので、個人レッスンや教室で技術を伝えていく機会が増えました。その時に生徒さんから楽しく腹話術に触れあっていただくことの大切さを教えてもらいました」

現在は普通に寄席へと出演されているスージィーさんですが、自らの経験を踏まえて、教えている生徒さんには家元制度のような制度は作らないようにしようと決めているそうです。実際、スージィーさんの教え子であるジィーニーさんは、「スージィーさん」と呼んでました。

「家元制度にしてしまえば、教えた弟子たちがお師匠さんにお金を入れてくれるので、私としては儲かるんですけれどね(笑)。そうなると、せっかく技術を身に付けた若い人たちを独立させたくないという欲が出てきてしまう気がするんです。もちろん、私が学んできた技術は身に付けて踏襲してほしいけれど、どちらかというとその技術をもって、どこへでも自由に飛び立っていってほしい

スージィさんのこうした思いが結実し、これまでの教え子の中からジィーニーさんのようにプロになってそれぞれの道を歩まれている方もいるのだそうです。そうした方々が、スージィさん主催の公演に手伝いに来てくれる時がとても嬉しとスージィーさんは語ります。ですが、舞台に立ちつつカルチャースクールで腹話術の裾野を広げる活動を続ける中で、さらなる腹話術業界の障壁に気づいたのだそうです。

「カルチャースクールには様々な方が通ってきます。なかには10年以上続いている教室もあるそうです。そうなると、最年長の方の中には仕事を無事リタイアされた方も出てきています。彼らが老後の趣味として腹話術の公演活動をしたいとなった時、発表の場を用意できないことに気が付きました。カルチャースクールの発表会は、一年に一回です。若い方の中にもジィーニーのようにプロを目指してみたいと言ってくださる方がでてきたのですが、せっかく腹話術を好きになってくれたのに、彼らをプロの舞台にまで導いていく道をつくることが私の力だけでは足りないことに気がつきました」

言われてみれば。同じ寄席に立つ演芸の方々でも、落語家や講談師は、芸に惚れた師匠のもとに弟子入りし、「前座」→「二つ目」→「真打」と修業期間から寄席に立たせてもらう機会を得ることできるのは知っていますが、俗に色物さんと呼ばれる腹話術師さんのような芸人さんたちは、どのようにしてプロになるのか道筋が全くわかりません。

これは、腹話術という技芸を承継していくうえで大きな課題です。

「だから腹話術という芸能を広めつつ、これから腹話術を始めようという人たちが勉強をできる場所や環境を用意することを、NPO法人COMEDY BOXの目標の一つに掲げました

こうしてスージィーさんとジィ―ニーさんを中心に、NPO法人COMEDY BOXは2024年7月1日に設立されました。現在会員数は約65人。子どもへの腹話術披露といった福祉活動とともに、大人の娯楽として「コメディーボックス円芸会」と題し、発表の場に困っている腹話術師と芸人の方々へ披露する場を設けることなどを行っています。

妙善寺とCOMEDY BOX間の意外なご縁

NPO法人COMEDY BOXの団体としての所在地は、港区で伝統文化交流館でも公演活動を行ったそうです。伝統文化交流館での活動は、キスポート財団公演の際、腹話術師スージィーの腹話術を古典芸能として組み込んで下さり出演したのがきっかけです。

NPO法人COMEDY BOX主催の寄席では腹話術以外にもマジックや大道芸も披露される

ところで、今回初開催となる「第1回 妙善寺こども会 ~みんなで腹話術にチャレンジ~」は、港区に団体が登録されているから、六本木で行うこととなったということでしょうか。

「それもあるのですが」とスージィ―さんは意外なご縁を語ってくださいました。

「実は、妙善寺の住職は自分主催でイベントを企画するのが好きな方で、10何年前に住職の企画したイベントを見に行ったことがきっかけで知り合いました。当時私は、三越劇場の舞台(日本喜劇人協会主催)で腹話術を披露していたのですが、それを何回か観に来て下さっていました。」

たしかに妙善寺さんは、コンサートや、映画鑑賞会、囲碁、ベビーマッサージ体験会に、ヨガなどイベントを頻繁に行うお寺だなというイメージはありましたが、。これは、いつかきちんと取材に伺う必要がありそうです。

そういった昔からのご縁もあり、今回子ども向けの体験会を開きたいというNPO法人COMEDY BOXの企画にも二つ返事で会場を提供してくれたとのこと。

「スージィーが個人でやっているカルチャースクールで子ども向けの授業をやったことはあります。ですが、今回、NPO法人COMEDY BOXとしては、初めての子ども向けイベントとなります。子どもの感性は素晴らしいので、彼らの演技を通じて、私たちプロでも新しい発見が得られると思っています」

とジィーニーさんは語ります。しかし、カルチャースクールに通う子供たちはもともと腹話術に興味がある子ですが、今回のイベントでは、まったく腹話術を知らない子も訪れる可能性があります。ご苦労もされているのではないでしょうか?

正直告知含めて苦労しているところが多くありますね。港区の放課後児童育成事業である“放課GO→クラブ”にアプローチをしたり、保育園や幼稚園にチラシを持って行ったり社会福祉協議会に連絡をしてみたり、地域展開を色々試してみています。第二回、第三回に向けていい経験にしたいですね

今回は会場が六本木のど真ん中ということもあり、子どもが日常的に居るエリアではないですから余計にそれはあるかもしれませんね。夏休みなので、ぜひご家族で参加してほしいところです。家族の中で誰が一番上手に腹話術ができるか、で盛り上がれそうですしね。子どもが喜びそうな要素としては、今回の体験会で子どもたちが触れるのが、可愛い目が印象的な、片手にかぶせるタイプの簡易パペット。実は、このパペット、靴下で作られているそうですが、ぱっと見そうと思えないくらい可愛くてびっくりします。

「パペットセラピー」とは?

子どもといえば、スージィーさんのプロフィールを調べていた時に腹話術師とは別に、パペットセラピーという謎の肩書を拝見しました。これはどのようなものなのでしょうか。

日本パペットセラピー学会という団体がありまして私は その団体の認定セラピストです。学会の定義としては以下です

~パペットセラピーとは~

発話機能をもつパペット(腹話術人形)を介在させることにより、クライエントの心身へ好ましい効果をもたらす活動を指します。自閉症児の行動調整や発話促進など特別支援教育領域、心理ケアを主体とする医療・臨床心理領域などで効果が得られています。
https://www.j-pta.net/

そこで 私はシンポジュームのパネリストになります

NPO法人COMEDY BOXさんの今後の目標はどういったところにあるのでしょうか?

「会員さんの中には、腹話術を演じている方だけでなく、腹話術を全くやったこともないけれど、活動は応援すると言ってくださっている方がいます。おかげさまで寄付金も多くいただいています。私どもとしては、活動を積極的に行って露出を増やすことで会員を継続的に増やし、会員の皆様にNPO法人COMEDY BOXに関与していただくメリットを提示していかないといけないと考えています。腹話術に興味がある方々と、団体や地域の壁を取り除いて集える場を作っていきたいです。コロナ以降、オンライン会議が一般化しましたが、やはり腹話術は対面でないと成立しない芸事です。昨年、東京で開いたワークショップに参加した地方の参加者から お茶会したいとの提案がありました。終了後、その生徒さんたちが山手線にのってぐるぐる回りながら芸のことや近況を報告しあって交流を図っていたと伺い、猛省しました。腹話術を演じる人、見る人、教える人を結ぶ場を作ることが当団体の目的でもあったのだと再確認しました。皆さんが腹話術を楽しむため、幸せになるための道しるべを作って行かれたらと思っています

とスージィーさん。ジィーニーさんはいかがでしょう。

「NPOとしては発足から一年しか経っていないため、まだまだです。が、何らかの形でお金を集めていかなければなりません。寄付のほか企業スポンサー様も探して、我々の活動に賛同していただく仲間を増やすことを頑張りたいです。持続可能な形として組織を万全のものとして人もお金も物も回っていく経済の循環型NPO法人を創って行きたいと考えています」

腹話術という技芸を、次世代に伝えつつ、その活用法を広く模索していこうとしているNPO法人COMEDY BOXこれからの活動から目が離せませんね!

取り急ぎ、腹話術を子どもと一緒に楽しみたい!という方は、2025年8月25日に六本木で開催される「第1回 妙善寺こども会 ~みんなで腹話術にチャレンジ~」ご家族そろって参加してみてはいかがでしょうか?

【2025年8月25日開催「第1回 妙善寺こども会 ~みんなで腹話術にチャレンジ~」

会場:東京都港区西麻布3-2-13 妙善寺仮本堂「かけはし堂」

時間:午前の部10:00~12:00、午後の部 14:00~16:00(会場は30分前)
料金:親子 1500円、子ども 500円
申し込み方法:info@susie-happyjob.com までメールにて申し込み。メールにて、氏名、人数、希望する回をお送りください。
アクセス:東京メトロ・都営地下鉄大江戸線「六本木駅」1C出口より徒歩5分

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