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幕末の舞台としての港区を知れる!港区立郷土歴史館特別展「激動する幕末維新の港区」

2024年12月4日

港区立郷土歴史館にて、2024年12月15日(日)まで開催されている特別展「激動する幕末維新の港区」。江戸城にほど近く、さらに大名屋敷が多数立ち並んでいたことから、欧米諸国の外交官、朝廷、幕府、そして諸藩の間で様々な事件が起こった幕末の港区エリアについて、豊富な資料を展示した特別展です。

港区の各所で起きていた幕末の事件を展示

本特別展ではペリー来航から戊辰戦争終結により明治時代が始まるまでの激動の時代を、歴史の流れに沿って紹介されています。
港区で起こった幕末の大事件の中から、印象的だった展示をいくつかピックアップしていきます。
まずは、ペリー来航に衝撃を受けた、江戸幕府が品川沖に砲台を設置し、江戸への上陸を阻止しようとした台場の設置です。会場には、ペリーが乗艦していた「黒船」サスケハナ号の模型から、台場の建設経緯から場所についての展示があり、普段当たり前に使っているお台場という名称について、改めて想いを馳せるきっかけとなりました。

展示「品川台場の配置及び現在との比較」

さらに、日米修好通商条約の締結への反発として起こった「桜田門外の変」の展示も興味深かったです。実行した水戸浪士たちは、事件直前に愛宕山の愛宕神社に集結したことで知られています。事件を題材にした版画や、当時撮られ始めていた写真で事件当時の愛宕山の姿を見ることができました。今の愛宕山の姿を知っていると、変わりように驚かされます。

「安政五年三月三日水府ノ脱士等芝愛宕ノ山上ヘ集会ニ及ビ旧主ノ鬱憤ヲ散ゼン為大老彦根侯ヲ撃殺ト雪中ニ密計ヲ評定シ余波ノ宴ヲ催ス図」 港区立郷土歴史館所蔵

他にも血生臭い事件が、港区を舞台に起きていたことは衝撃でした。攘夷派によるイギリス公館襲撃事件である東禅寺事件が、高輪で起こっていましたし、戊辰戦争のきっかけとなった薩摩藩邸焼討事件も、三田で起こっています。解説にはこうした事件が起こった背景や事件の関係者について詳細が語られていました。

寺院が外国公館になっていたのはなぜ? 地図からも知れるその理由

いざまち編集部として気になった展示として、第三章の最初にあった「外国公館化する寺院」がありました。
欧米との和親条約の締結後、様々な理由から、港区内の寺院が多数外国公館にされていました。
まず気になったのは、なぜ寺院? ということです。
その理由について、港区立郷土歴史館学芸員の岡谷成康さまにも教えていただきました。
・江戸幕府として、外国人外交官を迎えるにあたって「格式」や「設備」、そして単純に「広さ」が必要であり、ホテルなどが存在しない当時において、寺院が選ばれたことには必然性があった。
・外交官側からも、江戸へのアクセスの良さとともに、眺望が求められた。その結果、(当時は)海に近い高輪、高台にあって海が見える麻布の寺院が選ばれることが多かった。

展示「幕末期の港区域に存在した外国公館」

確かに、館内に展示してあった、当時外国公館となった寺院の地図を見ると、麻布と高輪に分布が集中していることがわかります(西應寺や真福寺は公館ではなく宿寺として用いられた)。

とはいえ、寺院の使用は半ば接収に近いものだったらしく、展示には「外国公使によって居住空間を失い、僧侶たちが本堂で寝泊まりするしかない。新しい建物を建てる費用を手当として支給してくれないか」という内容の、済海寺による幕府への請願資料もありました。済海寺は、フランス公館になっていたそうです。

先述した東禅寺事件は攘夷論の高まりを受けて発生した、イギリス公使を狙った水戸藩浪士などによる襲撃事件ですが、今回の展示では襲撃を食い止め殉職した外国御用出役・江幡吉平など、警備者側にフォーカスした展示もありました。幕末の歴史を取り上げる際にあまりスポットライトが当たらない人物らということもあって印象的でした。当然ですが、治安維持側の人間にだって死者は出るのですよね。

「最初のイギリス公使宿館跡」の碑もある港区の東禅寺

勝海舟の記録から、実際の軍服まで展示

東禅寺事件と同時期に起きた生麦事件やそれに端を発する薩英戦争、その後の英国公館焼き討ち事件から幕府による長州征伐の失敗と、目まぐるしく情勢は動き、気が付けば政治の中心は京へと移っていました。ですが、倒幕の機運が高まると、再び歴史の舞台は港区エリアに戻ってきます。

薩摩藩の挑発によって、幕府側勢力である庄内藩「新徴組(将軍の警護のために水戸藩が送り出した浪士組織のうち、分裂し京都に残らなかったグループ。残ったのが新撰組)」は、倒幕勢力の引き渡しを求めて三田にあった薩摩藩を襲撃、火を放ちました。
展示では、新撰組に比べると取り上げられることが少ない新徴組について詳しく述べられていて、当時の庄内藩についてなど背景も知れるようになっています。

鳥羽・伏見の戦いでの幕府の敗北後、江戸無血開城に向けて活躍した、「幕末の三舟」山岡鉄舟・高橋泥舟・勝海舟の三人についての詳細な展示にも興味を惹かれました。
注目の展示は「勝海舟書画巻」で、勝海舟がその生涯で危機に直面した四つの場面を自ら描いたものです。

「勝海舟書画巻」港区立郷土歴史館所蔵

区内でのできごとではありませんが、三舟の活躍に関連し、江戸無血開城後に起きた上野戦争にも触れられています。
館内には、実際に新政府軍の兵士が来ていた軍服なども展示されています。

「官軍兵士軍服」港区立郷土歴史館所蔵

展示を見学させていただいて

とにかく豊富な資料によって、港区内で起きた激動の幕末期について掘り下げられています。あまり歴史的に取り上げられることの少ない関連人物についての紹介も多く、歴史好きにも嬉しい展示の数々になっています。
また、今回の展示を通じて、港区に点在する史跡を把握しながら、どんな事件が起こったのかなど理解を深めることができます。
東禅寺や済海寺など、外国公館があったことを示す石碑が残る港区の寺院や、風光明媚な愛宕山、都会の中にひっそりとある田町の西郷隆盛と勝海舟の会談場所の碑など、これから港区の歴史スポットに行く際にも参考になる展示でした。

【港区立郷土歴史館】
住所:東京都港区白金台4丁目6−2
休館日:毎月第3木曜日(祝休日等の場合は前日)、年末年始(12月29日~1月3日)
観覧料(特別展のみ):大人(一般)400円、小・中・高校生(一般)200円
観覧料(特別展+常設展セット):大人(一般)600円、小・中・高校生(一般)200円
※港区在住・在学の小・中・高校生、港区在住の65歳以上の方、港区在住の障害者とその介助者(1名)の方は無料

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