【芝浦一丁目町会】楽しく笑える防災訓練!? 町会一丸となって、うどんをつくるイベント発見!
以前、東京都心でも、田舎のような町会活動が行われていることを知った私。
なんとか、町会の方々の活動を取材する機会はないかとあれこれ探していたところ、ひょんなことで知り合った芝浦一丁目町会長より
「こんど、防災訓練として“うどん会”をやるんだよ。来てみない?」
とお誘いが。
防災訓練でうどん会??
訓練というと記事にするには堅苦しいイメージもありますが、この機会を逃す手はない、ということで、お邪魔させていただくこととしました!
大人も子どもも夢中になって、うどんを打って食べまくる!
5月19日(日)、私は、港区立伝統文化交流館の駐車場にいました。
今回招待していただいたイベント「芝浦一丁目町会うどん会」は、炊き出し訓練をかねて、自宅でできる手打ちうどんの作り方を学ぼうという主旨のイベントです。
芝浦一丁目には老舗飲食店も多く、経験豊富なベテラン料理人の方々の指導のもと、かなり本格的な天婦羅うどんが楽しめるそう。
町会長によると、評判が評判を呼び、例年200食近く出る大きなイベントに成長しているそうです。
ところで皆さん、うどんがどのようにして作られるかご存じでしょうか?
実は、思ったよりもずっと簡単……なのです!ものすごく、力が要ることを除いて。
まず、小麦粉に少しずつ塩水を加えながら混ぜ続けます。すると、徐々に小麦粉と水がなじんでいき、おからのような小さな塊になっていきます。
このおからのような小さな塊になったらそれなりの粘度が出てきますので、一つにまとまるようこねていきます。この作業が本当に大変で、綺麗な塊にするには、成人男性でも腕がパンパンになるほどの力が必要です。
テレビでうどん作りの名人が、足でうどんの生地を踏んで鍛えている場面を見たことがありますが、なるほど、これだけ力のいる作業だと、足で踏んだ方が効率的という気になってしまいます。
綺麗な塊になったら、今度はそれを打ち粉を振ったまな板の上へ持っていき、綿棒で薄く薄く延ばして行きます。
根気よく丸く伸ばしていき、生地の厚さが3~5mmくらいになったら、今度はなるべく正方形に近い形に伸ばし整えて……
折りたたみます。
最後にたたんだ生地を包丁で切っていくと、麺の完成です。
手伝う子どもたちの楽しそうな歓声に思わず笑みがこぼれる
作り方は至ってシンプルながら、とにかく最初の力作業部分は、大人が中心となって下準備をするしかないという印象でした。が、ある程度麵生地が出来上がってきたら、小さい子どもたちの出番です。
一生懸命生地をこねて伸ばす子ども、粘土遊びの延長のように笑いながら生地を触る子ども、自分の仕事に満足がいかなかったのか「もう一回やる」と列に並びなおす子ども……。うどん作りに向き合う姿勢はそれぞれですが、みんな、自分の仕事に真剣で思わず笑みがこぼれます。
うどん処と呼ばれる地域ならともかく、近年はなかなかうどんを手打ちする経験は得られません。こんなに小さなころから貴重な体験ができるなんて、芝浦の子どもたちがちょっとうらやましくなりました。
打ち立て茹でたてのうどんに江戸前の幸の天ぷらが乗る!
切り終わったうどんはそのまま運ばれていき、釜で一気に茹で上げられます。
ちなみに、このうどんの運搬を積極的にお手伝いしている子どももいらっしゃいました。自分が食べることよりも、みんなの所へうどんを一生懸命運ぶ子どもたちの姿に関心しきりです。
さて、肝心のうどんには、地元で長年料理の腕を振るってきた職人の方々が揚げた天ぷらが乗ります。この日天ぷらになっていたのは、ハゼとゴチという、砂地に生息する江戸前を代表する魚2種。なかなかできない食べ比べで、それぞれの身の違いを楽しむことができました。
そのほかにも冷やしたキュウリとプチトマトも用意されており、かなり具沢山のうどんに。飲み物も飲み放題だったのに、なんと参加費はたったの500円!ちなみに、小学生以下は無料でした!
しかも、町会の方々からは
「せっかくだから何杯でも食べていきなよ」
とかなりの太っ腹なお言葉をいただき……。気がつけば、お腹いっぱいまで頂いてしまいました。
町会活動を盛り上げることが近隣住民との繋がりを生む
ひととおり、イベントを楽しんだあと、町会長の岡田祥男さんに改めてお話を伺いました。
「芝浦一丁目町会は、現在約1750戸もの会員が所属している大所帯の町会です。私は生まれも育ちも芝浦ですが、昔は、この辺りも平屋が多く並ぶ長閑なエリアで、こんなに人はいませんでした。ですがほら。ご覧の通り、この辺りも高層マンションが立ち並んでがらりと雰囲気が変わってしまったでしょう。このうどん会は、被災時に救援が届くまでの間、自分たちで身を守るための防災訓練としてそもそも始まっています。ですが、ただ訓練をしていたって面白くないでしょう。だから、新旧住民が入り混じって、こうしてみんなでうどんを食べる会にすれば楽しめるし交流の場になるんじゃないかという想いから始まっています」
たしかに都心部のマンションで暮らしていると、隣の住民の顔すら知らないということはままあります。こうした町会のイベントをきっかけとして、お隣さんの顔と名前が一致するということも多いのかもしれません。お付き合いが始まれば、被災時の安否確認などもすぐにしてもらえそうですし……そう考えると、かなり変わった取り組みに見えた『うどん会』ですが、町会活動の主旨としてはむしろ、ど真ん中ストレートなのかもしれません。しかし、少子化が叫ばれているのに、本当に子どもの参加者が多いですね。
「マンションに家族連れで越してきた方が多いからでしょうね。この辺りのエリアは町会活動が盛んなのですが、よくある神社さんとは関係のない町会主催のお祭りでは、近隣の町会とタイミングを調整して行っているんです。夏休みになると毎週のように、どこかの町会でお祭がある。この辺りの子どもたちは、毎週お小遣いを握りしめお祭りを走り回っているんですよ」
まるで、昭和のような風景ではありませんか。高層マンションの立ちならぶ路地裏に、新たな江戸の人情が育っているのをしっかりと感じ取った一日となりました。