
浜松町の再開発|世界貿易センタービル本館開業の先に見据える、全員が「ご近所さん」のまちづくり
2027年3月に世界貿易センタービルディング 本館/ターミナルの開業を予定している浜松町・芝大門エリア。建物の老朽化や都市機能の強化・アップデートなどを背景に、「100年に一度」とも称される大規模な再開発やまちづくりが各地で進行している東京ですが、浜松町・芝大門エリアも例外ではありません。

世界貿易センタービルディング外観イメージ 画像提供:一般社団法人 浜松町芝大門エリアマネジメント
ただし、現在進行している再開発/まちづくりは、今までの再開発とは少し異なる特徴があるそう。
どんなところが違うのか、どのようなまちづくりが行われているのか? 2023年4月に立ち上げた、浜松町・芝大門エリアのまちづくりを推進している「一般社団法人 浜松町芝大門エリアマネジメント」の関根隼人さん、中塚麻子さんにお話を伺ってきました!
エリアマネジメントは「街の課題を自分ごと」にするきっかけ的存在
おふたりへのインタビューに向けて準備をしているなかで、「そもそも『エリアマネジメント』ってどんな組織?」という素朴な疑問が浮かんできました。
国土交通省の公式ウェブサイトでは、「地域における良好な環境や地域の価値を維持・向上させるための、住民・事業主・地権者等による主体的な取り組み」と説明されていますが、分かるような分からないような……。
関根「一般的な定義はありますが、私としては『街の課題解決を率先して行う組織』と考えています。街にはありとあらゆる課題がありますが、個人や一社だけで解決できないことが多く、『自分ごと』として認識しづらい。
だからこそ、多くの人が主体的に働きかけるための歯車を最初に回す役割として、エリアマネジメントという組織が必要とされているのかな、と思います」
中塚「東京は戦後から高度成長期にかけて多くのビルが建ちましたが、年数の経過とともに建て替えが必要になります。昔のように『新しいビルを建てたら終わり』ではなく、そのエリアに暮らす人・働く人を置き去りにしないまちづくりが重要だという意識が高まってきたのも、エリアマネジメントという存在が求められるようになった理由のひとつかもしれないですね」

確かに「街の課題」は、誰かひとりが頑張って解決するものではありません。だからこそ、見ないふりをしてしまったり、手を挙げるのが難しいもの。
そういった課題解決をはじめ、浜松町に暮らす人・働く人がより街に愛着を持てる、街を好きになるための活動に向けた旗振り組織が「浜松町芝大門エリアマネジメント」、ということなんですね。
地域のファミリーや企業、学生など、エリアマネジメントの活動は「誰かと一緒」が基本
関根「実際の活動は、地域の方々や、このエリアに拠点を置く企業の皆さんと一緒に進めています。我々だけで何か動く、ということは基本的にないんですね。
たとえば、地域のお子さんをターゲットにした『浜松町キッズラボ』に加え、平成30(2018)年からは東京都市大学 都市生活学部との連携プログラムも行っています」

2025年に開催された浜松町キッズラボの様子
▼浜松町キッズラボについてはこちらの記事でご紹介しています
【行ってきました!】都会で味噌づくり? 親子で発酵+街の歴史を学べる無料イベント|浜松町キッズラボ
「浜松町キッズラボ」はその名の通りこのエリアに暮らすキッズが対象ですが、「浜松町の街と大学生」のイメージが結びつかず……。少し考えていると、「浜松町駅の周辺って、慶應義塾大学薬学部さんをはじめ、短期大学、都立高校など、実は学校も多いんです。イメージにないかもしれませんが(笑)」と、関根さん。

2025年度 東京都市大学 産学連携プログラム最終審査会の様子 画像提供:一般社団法人 浜松町芝大門エリアマネジメント
関根「浜松町はビジネス街のイメージが強く、若い世代の声が届きにくいエリア。そこで、もともとご縁のあった都市大学さんと連携したワークショップを開催しています。
街をどう盛り上げていけるかを、学生の皆さんに半年かけてリサーチ・検討してもらい、最後は近隣で働く企業人の前でプレゼンしてもらいます。今年は新たにメンター制度も導入し、エリアマネジメントのメンバーと学生さんで、より深いコミュニケーションを構築できるようになりました」
学生のレベルも高く、実際の再開発やエリア施策に活かせる意見も多いとか。学生も貴重な経験ができて、浜松町エリアの人たちは新しい意見が聞ける。まさに、Win-Winの活動です。
目的地は「浜松町駅」? 浜松町周辺は「東西」の行き来がネック
JR、地下鉄、東京モノレールと公共交通機関が充実している印象の浜松町駅ですが、実はひとつだけ課題となっている不便な移動があります。
関根「浜松町駅はさまざまな公共交通機関の連結点ですし、『アクセス良好』とも謳っているのですが、地元目線で見ると、東西の移動が不便なんです。
南北の移動は電車などで気軽に移動できます。でも、浜松町駅を中心にして、東側の海沿いから、西の東京タワーや増上寺への移動は電車やバスがなく、公共交通機関でカバーしきれていない部分」

浜松町近辺の鉄道路線図(国土地理院地図より)
たとえば、「増上寺から旧芝離宮に行こう」と思ったら、大門通りを真っすぐ歩くしかありません(ちなみに、浜松町駅を中心に西側が「大門通り」東側が「海岸通り」という名称なんですよ)。
確かに、「浜松町駅を通り過ぎて」の移動が少し億劫に感じてしまうのが正直なところです。
関根「交通インフラはすぐに導入できるものではないので、ここはエリアマネジメントの出番ではないかと、無料循環バスを走らせる、という結論にたどり着いたんです」

2025年の試験運行で走行した無料循環バス 画像提供:一般社団法人 浜松町芝大門エリアマネジメント
2025年に試験運行した無料循環バスは、浜松町駅、大門、東京プリンスホテル、東京タワー、フェアモント東京、竹芝エリアを1周回るルートです。

無料循環バスの実証実験ルート 画像提供:一般社団法人 浜松町芝大門エリアマネジメント
実証実験では、14日間でなんと1,700名以上の方が乗車する結果に!
感想を聞いてみると、おふたりとも声をそろえて、「こんなにたくさんの方に利用いただけるなんて、予想だにしていなくて驚きました!」と興奮気味。中塚さんは、「実験前は、もしかしたら利用してくれるのは1日1人かも……なんて話もしていたんです(笑)」と言います。
関根「浜松町駅を中心にした東西の往来は、歩くと15~20分はかかります。利用いただいた方からのアンケートを見ていると、『芝公園近辺に住んでいるけど、なかなか竹芝エリアに行くことがない』という回答も多いんですよね」

実証実験のアンケートは手軽なオンラインで。 画像提供:一般社団法人 浜松町芝大門エリアマネジメント
中塚「その逆もしかりで。竹芝エリアはマンションもたくさんあるのですが、浜松町駅までは来ても、実はその先の芝公園や東京タワーに行かれたことがない方もいらっしゃることが分かって」

ウォーターフロント竹芝エリア、実は住宅も多いんです
「みなさん、浜松町駅が目的地になってしまう」というお話を聞いて、なんて贅沢な! と感じてしまいました。増上寺や東京タワー、すぐ目の前で海を感じられる強コンテンツが集まるエリア、もしかしたら「毎日見ていると行った気になってしまう」という現象なのかもしれませんね。
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街の魅力を体感できるのは、バスだからこその特権
無料循環バスの実証実験、もちろんおふたりも体験されましたよね?

2025年に行われた無料循環バスの試験運行の様子 画像提供:一般社団法人 浜松町芝大門エリアマネジメント
中塚「もちろんですよ!『あったらいいな』から始まっているので、やっぱり便利だなと感じましたね。それに、浜松町駅で打ち合わせが終わったあと、バスがあるなら東京タワーでお茶して気分転換して帰ろうかな、という気分にもなる。歩くとなると尻込みする距離ですが、無料のバスなら行きやすいですし」
関根「私は時間的な面からタクシーで最短距離を移動することが多いのですが、バスはゆっくり走るので、街の風景がよく見えます。街を体感しながら移動している、と感じて『バスは最適解だったのかも』と、強く思いました」

バスには近隣で開催するイベント告知なども。 画像提供:一般社団法人 浜松町芝大門エリアマネジメント
中塚「そう。知らなかった道も通るので、『あ、こんなお店あったんだ』『東京タワーの足元って自然だけじゃなくお店も結構あるな』など、いろいろ発見できるのが良い!」
関根「もちろん、『ここにバス停があったら便利なのになぁ』と感じる部分もあったので、本運行に向けた課題も感じることができましたね」
バスは単なる移動手段ではなく、街の広告塔や体験の場にもなります。
見慣れた街の景色をバスの車窓から眺めると、また新しい発見があるかもしれません。何気ない変化に新しい魅力を見つけられるのは、その街をよく知る地域の人だからこその特権かもしれないですね。

赤羽橋エリア、実はカフェなどもあるんですよ。
地域の人たちに愛してもらいたい! 無料循環バスは2027年3月正式運行予定
実証実験を終え、無料循環バスは2027年3月の本格運行に向けて、現在さまざまな調整を行っています。

「無料循環」が分かりやすいよう、試験運行時からアピール。 画像提供:一般社団法人 浜松町芝大門エリアマネジメント
関根「実証実験時、乗車された方にはアンケートの協力をお願いしていましたが、満足度は80%超、本格運行への利用意向は95.8%の回答でした。運行ルートの調整やバス停の場所をはじめ、本格運行に向けて、現在は各所と協力して鋭意調整中です」
中塚「アンケートと言えば、印象的なことがあったよね?」
関根「そうなんです。実は、実証実験が終わったあとに1本のお電話をいただいたんです。『無料循環バスの実験時に時間がなくてアンケートに答えられなかったけど、今からでもアンケートに回答できますか?』という、ありがたいご連絡でした。
わざわざ連絡してくださってご意見をくださるなんて、本当に感激しましたね」

走行中の車内ではエリアのプロモーション映像も放映! 画像提供:一般社団法人 浜松町芝大門エリアマネジメント
アンケートの回答は継続を期待するポジティブな声が大多数。
現在は、2027年3月の世界貿易センタービルディング本館のオープンと同時に本運行を開始できるよう、多くの方々が奮闘されているとのこと。本格運行まであと1年ちょっとですが、今から楽しみです!
中塚「定期運行のバスを走らせるなんて初めての経験なので、毎日が手探りです(笑)」
「だらだら祭り」に「旧芝離宮恩賜庭園」の池さらい! 貴重な経験も体験
地域の住民の方だけでなく、浜松町・芝大門エリアの企業の方と一緒に活動することがモットーの、浜松町芝大門エリアマネジメント。ということは、今までの活動で、おもしろい話もあるのでは?
関根「強烈な経験として残っているのは、生まれてはじめてお神輿を担いだ、芝大神宮の例大祭『だらだら祭り』ですね。街の方の熱量を肌で感じられたし、お神輿を担いだ翌日以降の肩の激痛も知りました(笑)。
でも本当に楽しくて、率先してお神輿用品も調達しましたし、今ではお祭りを待ち望む地域の人たちと同じ気持ちです。今年もそろそろウォームアップしないと、って(笑)」
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中塚「私は旧芝離宮恩賜庭園の清掃ボランティアですね。ゴミ拾いなどではなく、なんと池の水を全部抜いての池さらい! 長靴履いて、みんなで汗だく・泥だらけになって(笑)。
文化財って『見て楽しむ』ものだと思っていたのですが、庭園を管理する側の立場として関われたという驚きの気持ちと、まさかこんな都会の真ん中で池に入れるなんて! という気持ちで、本当に貴重な経験ができたなと思っています」

旧芝離宮恩賜庭園にて庭師の方と共に小池の清掃ボランティア 画像提供:一般社団法人 浜松町芝大門エリアマネジメント
旧芝離宮恩賜庭園は、もともと小田原藩主・大久保忠朝が造営した庭園で、紀州徳川家の邸地でもありました。思わず「小判とか出てきました?」と聞くと、「楽しみにしていたけど、何も出てこなかった」とのこと。残念!
▼旧芝離宮恩賜庭園についてはこちらの記事でも紹介しています
港区の公園「旧芝離宮恩賜庭園」
自分たちが楽しむから、人が集まり街が成長する
おふたりの話を聞いていて感じるのは、本当に楽しみながら浜松町・芝大門エリア活性化のための活動に取り組まれているんだな、ということです。

何を伺っても、楽しそうにお話してくれました!(写真左から)中塚麻子さん、関根隼人さん
関根「中塚さんとも話しているのですが、まちづくりは、やっている本人が楽しんでいないと周りに伝わりません。まず自分たちが面白い・便利だと思えることをやる。そして、その活動に共感してくれる人が少しずつ増えていく。より良い街をつくるには、その積み重ねしかないんだと思います」
中塚「企画しているさまざまなイベントもそのひとつ。まずは、浜松町芝大門エリアという場所に身を置いてもらわないと始まらないですから。『楽しそう』と思ってもらえる場をもっと散りばめていきたいですよね」
さまざまなイベントや無料循環バスも、すべては街の魅力に出会ってもらうための「きっかけ」。今後も多彩なイベントを予定しているそうですよ!
先進性とノスタルジーを兼ね備えた浜松町駅は、海にいちばん近い山手線の駅
最後に、おふたりに浜松町エリアだからこそのお気に入りポイントを教えてもらいました。
関根「旧芝離宮恩賜庭園に『大山』という小高い山があるんですが、そこから見える浜松町の街の姿がすごく好きです。何百年も前から残された大名庭園の先に高層ビルが見えて、モノレールが走る音が聞こえる。新旧の良さが凝縮された、まさに浜松町! という景色なんです」

中塚「私は地下鉄をよく利用するのですが、階段を上って大門通りに出た瞬間ですね。特に夕暮れ時が本当に美しいんです。西側に陽が落ちて、東京タワーにも光が灯って空がグラデーションになる。そのすぐ近くで、仕事帰りの人たちが楽しそうに赤ちょうちんのお店に入っていったり(笑)」
加えて、関根さんから「それに、浜松町駅は山手線でいちばん海に近い駅でもあるんですよ」という一言が。「海の近くにいるんだな、と感じる瞬間もいいですよね」と、中塚さん。
2027年には、世界貿易センタービルディング本館もオープン予定。新しい貿易センタービルには、日本初上陸となるラグジュアリーホテルや多彩な商業施設も開業を予定しています。
先進性と歴史、そして、ちょっとしたノスタルジーを感じられるのが、浜松町芝大門ならではの魅力。
「今はまだ手探り状態」と言う浜松町芝大門エリアマネジメントですが、「このエリアの『ご近所さん』の感覚で活動していきたい」とも。その言葉から、イベントなどを通じて、常にワクワク感を感じさせてくれる「ご近所さん」になってくれそう! という気持ちになりました。
浜松町芝大門エリアマネジメントは、これからも無料循環バスの本格運行に加え、さまざまなイベントを開催予定。公式LINEでお知らせを受け取ることができるので、ぜひ登録しておきましょう!
【一般社団法人 浜松町芝大門エリアマネジメント】
浜松町芝大門エリアマネジメント公式note「Hamamatsucho Life Magazine」
公式LINE「芝東京ベイLINE」

