
まるでアイスショコラ!? 実は夏の飲み物“飲む点滴”甘酒の魅力を発信する「甘酒・雑貨かふぇ こめどりーみんぐ」
日本の食文化として注目されている、発酵文化。発酵食品が体に良いということは広く知られており、なかでも甘酒は“飲む点滴”として注目を集めています。港区芝大門にある「甘酒・雑貨かふぇ こめどりーみんぐ」も日本の食文化や発酵文化を発信するお店。
店名「こめどりーみんぐ」の通り、甘酒カフェとしての顔を持ちながら、お米に関連した食品、化粧品、アクセサリーなども取り扱うショップ。増上寺まで歩いてすぐという立地から、外国人観光客向けのさまざまな体験メニューも用意されています。
今回は、ユニークなコンセプトのこめどりーみんぐの吉田さんにお話をうかがって来ました!
甘酒や米粉のお菓子に化粧品まで! お米の力を多角的に実感
「最初は、オーガニック系の商品を取り扱うセレクトショップとして、三田エリアで営業していたんです。この場所で『こめどりーみんぐ』としてリニューアルオープンしたのが、2023年。そのタイミングで、日本を代表する食材である“お米”をコアにしたお店にしよう、というコンセプトに切り替えたんです」
お米をコアにしたショップ、というのはとても勇気ある決断では……? でも店内を見渡してみると、甘酒や米粉のクッキー、お米でできたビール、そして化粧品などが並び、「お米のポテンシャルってこんなに無限大だったんだ!」と気づかされます。
そして、こめどりーみんぐさんで欠かせないのは、“飲む点滴”とも言われる、甘酒カフェとしての姿。
「甘酒は種類豊富に取り揃えています。なかには、前身のセレクトショップ時代からお付き合いのある、1873(明治6)年創業の『山口こうじ店』さんと共同開発した甘酒も。実は甘酒カフェをはじめようと思って、真っ先に相談したのが山口こうじ店さん(笑)。国産米、無添加にこだわっていて、新しいことにも積極的かつスピーディーに取り組んでくれるので、いつも商品開発の相談に乗ってもらっています。
たとえば『HACCO CACAO』というカカオの甘酒。麹と一緒にカカオを発酵させていて、砂糖不使用なのにお米の甘さを感じられるんです。少量をストレートで飲んでも、豆乳と割ってチョコレートドリンクのように飲んでも美味しいですよ」

本当にこれが甘酒!? という驚きの体験をさせてくれる「HACCO CACAO」。画像提供:こめどりーみんぐ
HACCO CACAOは、女性スタッフの方の“罪悪感のないご褒美ドリンクがあるといいよね”というひと言が開発のきっかけだそう。取材時に少しいただいたのですが、本当に上質な高カカオドリンクのようにカカオの風味が鼻に抜けて、「これって甘酒!?」と驚くほどのお味でした!
甘酒ってどうできるか知ってる? アルコール/ノンアルコールの分岐はどこ?
こめどりーみんぐさんの取材に来ておいてなのですが……実は私、甘酒があまり得意ではないのです。でも試飲させていただいたHACCO CACAOは、自分でも驚くほど違和感なく、むしろ「もっと飲みたい!」と思うほど。なんでだろう? と不思議に感じながら吉田さんのお話をうかがっていると、その理由が分かりました。
「甘酒って、アルコール/ノンアルコールのふたつがあるんです。神社などでいただく甘酒は、アルコール入りのことが多いですね」
もしかして、ちょっと苦手かも……と感じていた甘酒って、アルコール入りの甘酒だったのかも!「甘酒の作り方を見ると、アルコール/ノンアルコールについて分かりやすくなると思いますよ」と、吉田さんが見せてくれたのは、お店のカウンターに置いてあった手作りの冊子。
「お米から米麹ができますが、そこに酵母を加えるかどうかで、甘酒のアルコール/ノンアルコールが分岐するんです。酵母を加えるとアルコール入りの甘酒になるのですが、こめどりーみんぐで提供しているのは、酵母を加えないノンアルコールの甘酒。
英語を話せるスタッフもいるので、外国人観光客の方に甘酒ってこういうドリンクですよとご説明しますが、実は日本人のお客さんに説明すると“知らなかった~!”と喜ばれることも多いんです(笑)」
私もご説明いただいて、「“甘酒”とひとくくりに考えていて、ちゃんと理解していなかったんだな」と気づきました。自分が苦手だったのは、アルコール入りの甘酒で、ノンアルコールの甘酒はまったく大丈夫(むしろ好き)だった、という訳ですね。
「アルコール入りの甘酒は酒粕の風味が強くて、少し癖がありますよね。それはそれで美味しいですが、そういう方にこそノンアルコールの甘酒を飲んでほしい。こめどりーみんぐでは、種類豊富の甘酒を1杯からお試しいただけるので、1瓶買うのは勇気がいるけど……という方にもぜひチャレンジしていただきたいです」
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そして吉田さんから「実は甘酒って夏の飲み物なんです。甘酒って俳句の夏の季語なんですよ」というひと言が。甘酒について、知らない事だらけだったなぁ……と実感です。
ジブリ作品で日本の食文化は知ってるけど……“体験価値”も日本旅行のお土産に
店舗があるのは、増上寺のすぐ近く。外国人観光客の方もとても多いエリアでもあり、こめどりーみんぐさんは、日本の食文化を発信しようとさまざまな工夫をされています。たとえば「おにぎり作り&甘酒飲み比べ体験クラス」。

英語対応も可能な「おにぎり作り&甘酒の飲み比べ」。画像提供:こめどりーみんぐ
「日本での思い出を、体験として持ち帰ってもらいたいんです。海外の方々はジブリ作品などの食事のシーンを見て、日本の食事に関する知識はあるんです。コンビニでおにぎりを買って、食べることは簡単にできる。でも、お米を握っておにぎりを作る体験をしてもらいたいし、そういった体験を望まれているという一面もありますよね」
最近は日本でも「モノ消費よりコト消費」が注目されていますが、炊きたてのお米の温かさや柔らかさを手で感じる体験は、きっと心に残る思い出になるはずです(あたたかいおにぎりの味も格別ですしね!)。しかも甘酒の飲み比べも一緒にできれば、同じお米からできている「おにぎり」と「甘酒」はこんなに違う! と驚く姿が目に浮かびます。
「おにぎり作りだけじゃなくて、みそ作り体験もできます。日本の文化に触れたい、という外国人のお客さんも多いですよ」
すぐ近くの廣度院ともコラボし、甘酒で文化財保存の一翼を担う
お店に置いてある商品を眺めていると、パッケージに浮世絵が描かれた甘酒を発見。外国人観光客の方に喜ばれそうなパッケージだなぁと思っていたのですが、この浮世絵に見覚えが……。

増上寺のすぐ目の前にある廣度院とのコラボ甘酒。画像提供:こめどりーみんぐ
なんといざまちでも取材させていただいた廣度院さんとのコラボ甘酒!
「廣度院の副住職さんには、年末にたくさんの甘酒をご依頼いただいたり、懇意にさせていただいているんです。その中で、廣度院さんの練塀に関連したコラボ商品を開発できないかご相談いただいたんです。最初はお菓子で考えていたのですが難しい部分もあり、紆余曲折を経て、甘酒に(笑)」
なるほど。でも、最終的にこめどりーみんぐさんの主力でもある甘酒に落ち着いたのは、あるべき姿だったのかも……?
「最初はラベルだけオリジナルにしようか、という案もあったのですが、せっかく一緒に商品開発するならオリジナルの、東京土産にもできるような甘酒がいいよね、と。だから、廣度院さんとのコラボ甘酒は東京のお米を使った甘酒にしました。ノーマルな“江戸糀ほわいと”と、桜餅のような味わいの“江戸糀さくら”の2本。もちろん、作ってくれているのは、山口こうじ店さんです」
“東京土産に東京のお米を使った甘酒”になんて、江戸の粋を感じます! ちなみに、東京のお米で作る甘酒は、スッキリした味わいで初心者にもおすすめだそう。
「廣度院さんとのコラボ甘酒は、売り上げの一部を練塀保存の寄付にも充てています。実は私も練塀保存委員会の一員として、一緒に活動しているので(笑)」
▼廣度院の歴史や練塀についてはこちらの記事でも紹介しています
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▼廣度院練塀保存委員会による練塀勉強会についてはこちらの記事でも紹介しています
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廣度院さんとのコラボ甘酒、どんな方が購入されるのでしょうか?
「練塀についての専門的な説明はできませんが、簡単な説明であればお店でもさせていただいています。貴重な練塀保存に向けた寄付になるなら、と日本・海外の方問わず、購入いただくこともありますよ」
ショコラや青汁、トマトなどの変わり種も! これからは甘酒片手の出社もアリ?
「山口こうじ店さんとはいろいろな甘酒を開発しているのですが、“今月の甘酒”として、月替わりの甘酒も出しています」と、吉田さん。

カフェメニューも充実。甘酒片手に芝さんぽもおすすめ(2025年8月時点のメニュー)。画像提供:こめどりーみんぐ
「山口こうじ店さんのすごいところは、すでにできている甘酒に味や香りをつけるのではなく、お米と一緒に素材も発酵させることができる技術。なので、素材の味や香りを最大限に感じることができるんです。
トマトなど、甘酒とは結び付かなそうな素材でも、上手に美味しい甘酒になるよう作ってくれるんです」
月替わりの甘酒があるということは、最低でも12種類以上。甘酒にそんなに味があるなんて、想像もしていませんでした!
「2025年8月の月替わりの甘酒は、冷やし甘麴しょこらです。とても人気の甘酒なんですよ」
「甘酒カフェなので、オープンする前は女性のお客さまばかりになるのかな? と思っていたのですが、実はお客さまの3割ほどは男性。火曜と木曜は朝7:10からテイクアウトのみですがお店を開けているので、出勤前に立ち寄られる方もいらっしゃいるんですよ」
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“コーヒー片手に出勤”は想像通りの風景ですが、実は大門周辺は“甘酒片手に出勤”の人もまぎれているのかも!? カフェインフリー、ビタミン豊富で美容や健康に良い甘酒を朝摂取すると、脳もしゃっきり、効率的に働くことができるかもしれません。
江戸の風情が残る大門エリアで、奥深い甘酒の世界に一歩踏み出してみませんか?
【甘酒・雑貨かふぇ こめどりーみんぐ】
住所:東京都港区芝公園1-7-14 KSひかりビル
営業時間:11:00~20:00(火木は7:10~)、土日祝 10:00~18:00
休み:なし
アクセス:都営地下鉄大江戸線・浅草線「大門駅」A6出口より徒歩1分、JR山手線・京浜東北線「浜松町駅」北口より徒歩6分、都営地下鉄三田線「御成門駅」A2出口より徒歩6分