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「港七福神めぐり」は開運と観光のイイトコ取り! 麻布台ヒルズに六本木、麻布十番商店街も

2024年6月6日

六本木ヒルズ、東京ミッドタウンなどの大型商業施設をはじめ、テレビ局やグルメスポットのほか、美術館や緑も多い港区六本木周辺。六本木駅からは少し離れますが、2023年11月には麻布台ヒルズがオープンし、港区でも注目されているエリアです。

ほかにも、港区といえば外せない東京タワーや、昔ながらの老舗が集まる麻布十番商店街など、さまざまな魅力が詰まったエリアですが、実は主要観光スポットをぐるっと回るのに最適なルートがあることをご存じでしょうか?

それが、「港七福神めぐり」。
港区の主要スポットと合わせ、七福神もめぐることもできるという、一度で二度おいしいルートなんです。

ちなみに、港七福神めぐりで足を運ぶ寺社は8カ所。
“七”福神なのになんで8カ所なの? どうやって巡るのがおすすめ? などなど、ちょっと気になるところもあります。

ということで、今回は、気になる「港七福神めぐり」の歴史や8社の謎について、十番稲荷神社の権禰宜・渡瀬恭孝さんに教えてもらいました!

十番稲荷神社 権禰宜・渡瀬恭孝さん
平成19年に十番稲荷神社に奉職。権禰宜として神事に携わる一方で、園芸係として桜やアジサイなどを育成している。

戦前からはじまった「港七福神めぐり」とは?

まずは、「港七福神めぐり」について教えてもらいましょう。

「現在は“港七福神めぐり”としていますが、そのベースにあるのが、戦前にはじまった“麻布稲荷七福神詣”です。麻布稲荷七福神詣がはじまったのは、昭和8(1933)年。
昭和初期、世間で七福神めぐりがブームになっていたようで、お正月にみなさんが七福神めぐりをしていた。お稲荷さんの信仰をもっと深めたいという気持ちもあり、麻布区内(現在の麻布・六本木エリア)のお稲荷さん8社で、じゃぁうちも七福神をやってみましょう、となったんです」

港七福神めぐり最大!?の謎! 七福神なのに8社のワケとは?

七福神なのに、なぜめぐる寺社が8社めぐるのかについても、さっそく聞いてみました。
ちなみに七福神とは、一般的に「恵比寿・大黒天・毘沙門天・弁財天・布袋・福禄寿・寿老人」の七神です。

「8社なのは、昭和初期の麻布稲荷七福神詣から変わってないんです。七神の神様と、もうひとつは“宝船”。この宝船と七神で8社です」

十番稲荷神社にある「宝船」

言われてみれば、七福神って、船の帆に大きく「宝」と書かれた宝船に乗っていることも多いですよね。

「宝船が加わった云われには、十番稲荷神社の元となるお社が関係してきます。実は十番稲荷神社は、戦後、昭和25(1950)年にふたつの神社が合併してできた神社なんです。
戦争末期、麻布十番近辺は空襲の被害がひどくて、焼け野原になってしまいました。もちろん、神社も同じく被害を受け、慶長年間(1596~1615年)に創建された末廣神社、和銅5(712)年創建とも言われている竹長稲荷神社が無くなってしまったんです。麻布稲荷七福神詣にはこのふたつのお社も参加しており、担当していたのは、末廣神社が弁財天、竹長稲荷神社が宝船。
竹長稲荷神社が宝船を担当していた理由として、歌川広重が書いた宝船の絵が、御社宝としてあったからと言われています。で、これはいい宝船だ、ぜひ七福神参りのメンバーに入れよう、という経緯で宝船が加わったようですね」

なるほど! それで昭和初期の時代から、8社なんですね。
あれ? でも「末広神社と竹長稲荷神社が合併して、現在の十番稲荷神社になった」ということは、現在は7社でもおかしくないのでは……?

「昭和8年にはじまった麻布稲荷七福神詣ですが、戦争の影響もあり、昭和15(1940)年で中断してしまいます。戦後も、しばらくは七福神参りをできる状況ではなくなってしまいました。
でも、後に、港区観光協会さんから“港七福神めぐりをやりませんか?”とご提案をいただいたんです。ベース(麻布稲荷七福神詣)もあったので、改めて七福神めぐりに参加する寺社を調整して、昭和41(1966)年に復活し、現在に至ります。
その時に、弁財天と宝船のふたつが十番稲荷神社にあるより、各社寺ごとにひとつの神様にしたほうが良いだろう。ではどちらかを別のお社に担当していただこう、ということになったようですね。そこで、もともと弁財天を祀られていた宝珠院さんに弁財天を担当していただいて、十番稲荷神社が引き続き宝船の担当になったんです。宝船を残したのは、やはり特徴的だからでしょうね」

七福神めぐりは信仰の賜物でありつつも、エンタメ要素も必須!

港七福神めぐり、書置きの御朱印は全8色(画像提供:港七福神めぐり)

現在の港七福神めぐりは、麻布・六本木エリアをぐるっと1周するルート。「スタートやゴールは決まっていないので、どこからはじめていただいても大丈夫ですよ」と渡瀬さんは言います。
さらに、七福神めぐりにおいて、ルートの存在はかなり大切なポイントとのこと。

「ほかの地域の七福神めぐりを拝見していても、ルートは大事です。たまに、無理矢理組み込んだのかな? と感じてしまうこともあるくらい(笑)。七福神めぐりは信仰の賜物でもありますが、エンターテインメント要素も多く含んでいるという側面もあるので、歩いていて楽しいか、観光地を上手に組み込めているかも大切。
港七福神めぐりは、観光協会さんのお声がけからはじまったというのもあり、麻布稲荷七福神詣を活かしつつも、さまざまな要因が相まってルートが決められたと思います」

ベースとなる七福神めぐりがあったとはいえ、再編後の港七福神めぐりは、もっと港区を楽しめるルートにアップデートされたんですね。とはいえ、当時はまだ六本木ヒルズや東京ミッドタウンなんてなかった時代。先見の明とは、まさにこのこと!

「現在はどこからはじめていただいても大丈夫ですが、実は戦前はスタートのお社が決まっていたんです。宝船と七神の木彫りの像が各神社にあり、まずは竹長稲荷神社で宝船をいただく。そのあと各神社をめぐり、1社ずつ神様をお乗せして、最終的に宝船に乗った七福神を完成させる、というスタイルだったみたいです(※現在は木彫りの像をいただいてめぐることはできません)。
七福神めぐりをするなら、まずは神様のための宝船がなきゃダメだろう、ということで竹長稲荷神社がスタートになったんですね」

宝船に乗る七神

現在は、元旦から成人の日までの間、専用色紙に御朱印をいただくことができます。また、書置きの御朱印をいただくことも可能。書置きの御朱印はそれぞれの寺社で和紙の色が違い、すべてめぐると、8色の鮮やかな御朱印がそろいます。

最短ルートでめぐりたい? 港区トラップに要注意!

「今のルートは、歩くと約6kmで所要時間は3.5~4時間くらい。近くてすいすい行ける寺社もあるんですが、やっぱりこの地域は坂が多いものですから、距離の割に時間がかかるんです。時たま、体力の関係で不安な方から、歩いて巡れそうかお問い合わせのお電話をいただくこともありますよ」

港区だけでなく日本各地にある七福神めぐりですが、所要時間4時間弱、というのは長い方なのでしょうか?

「そうですね。エリアとしては広い方だと思います。とはいえ、港区でも楽しいエリアを巡れる、というのは大きな特長ですね」

ぐるっと1周、港区の主要観光地を含めて巡ります(画像提供:港七福神めぐり)

そう言って、港七福神めぐりのマップを見せてくれた渡瀬さん。確かに推奨ルートを見てみると、六本木ヒルズに東京ミッドタウン、東京タワー、芝公園に麻布十番商店街と、バラエティ豊かな観光名所を網羅できます。
そして地図を見ていて、ふと感じたこと。それは、「ここはショートカットできるのでは?」と感じる場所がいくつかあることです。

「最短ルートをおすすめできるといいんですが、分かりやすい道、という部分に重点を置いたルートなんです。地図を見ると細い道を通って行けそうな感じがするんですが、大通りから1本入り込むと、迷われる方が多いんですよ(笑)。
港区と言えど住宅地もありますし、細い道がごちゃっとしているエリアもあるんで。そういうエリアに入り込んで迷われた方から電話をいただいて、場所を把握するために目印になりそうなものはありますか? と聞くんですが、ない、と(笑)」

「ぐるっと回るルートなので少し時間がかかるかな」と渡瀬さんはおっしゃいますが、今後、港七福神めぐりを予定しているなら、マップにある推奨ルートでめぐるのが良さそう。道を聞こうにも、目印すら伝えられなくなってしまうので、注意しましょう。
もし歩きに自信がない場合は、地下鉄の力を借りるのがおすすめです。

「今は地下鉄も開通して麻布近辺も便利になったんですが、地下鉄が開通するまで、このあたりは“陸の孤島”と呼ばれていましてね(笑)。戦前は路面電車が走っていたので、七福神めぐりの乗り放題切符なんかも販売していたそうですよ」

港七福神めぐりは、心惹かれる寄り道スポットが充実しているので、寄り道の時間は計画的に! 寄り道に気を取られすぎて、うっかり社務所が閉まる時間を過ぎてしまわないよう、しっかりタイムキープしましょう。
もしかしたら「寄り道が楽しすぎること」が、最大の港区トラップかもしれません。

1年のはじまりを七福神めぐりで! 毎年アサイチで来られる方も

港七福神めぐりの御朱印をいただけるのは、前述した通り、毎年元旦から成人の日まで。初詣を兼ねて、港七福神めぐりをされる方も多いそうです。おめでたい気持ちでその年のスタートを切りたい気持ちは、誰もが同じですよね。

七福神+宝船の御朱印がそろうと、おめでたい色紙が完成!(画像提供:港七福神めぐり)

「ありがたいことに、毎年たくさんの方がいらして下さいます。参拝者の方と個別でお話しする時間はないのですが、毎年、必ずアサイチで来られる方もいらっしゃいます。その逆に、ずっと来られていた方のお顔が見えないと心配になりますよね」

毎年いらっしゃる方は、御朱印色紙をすべて保管されているんですかね?

「どうでしょう? 昨年の色紙をお持ちいただければお焚き上げしていますので、保管されてもいいし、毎年新しい色紙にされてもいいと思いますよ」

年始の限られた期間のみにいただける、港七福神めぐりの御朱印デザインも気になります。

「戦前の麻布稲荷七福神詣の御朱印を見ると、デザインに統一性があるので、おそらく一括で作ったんじゃないかと思いますね。現在の港七福神めぐりについては、お寺さんも参加されたこともあり、各社それぞれです。
麻布稲荷七福神詣から引き続き参加されている神社さんは、昔のデザインを踏襲されている感じもあります」

十番稲荷神社さんはいかがでしょう?

「十番稲荷神社の宝船の御朱印も戦前の御朱印を元にしていますが、少し変えていますね。というのも、長い間使っていると、どうしても印がすり減ってしまうんです。で、そのすり減った印を元に新しく作って、またすり減ってまた新しく作って……を繰り返していたようで、私が来た時、描いてある意匠が分からない、という現象が起きてしまっていて。
なので、古い文献を改めて見直して、ここに魚籠がある、ここにあるのは松、など、潰れてしまった部分を見やすくしました。
御朱印って、細かすぎると印が欠けてしまったり、美しく押すのが難しいんです。なので、もともとの形は崩さず、でも線がしっかり写せるように、少しわかりやすい印にしました」

ピーク時はトイレも行けない!? 年始の寺社は大忙し

数えたことはないのですが……と前置きしつつ、「だいたい5,000~6,000人程度が年始に港七福神めぐりをされるかな」と教えてくれた渡瀬さん。
思わず「それは社務所のみなさんも大変そうですね」とつぶやくと、ちょっと困った表情で「そうなんですよ……」と言いながらも、少しうれしそう。

「実は以前は元日から小正月(1/15)までやっていたんです。でも港七福神めぐりの場合、ご家族で管理されているような小さい寺社も多い。ありがたいことなのですが、参拝者の方の対応をする場合、小さい寺社はどうしても大変で……。ただ、多くの方が楽しみにしてくださっていますし、急に短くするのも申し訳ない。ということで、元日から成人の日まで、になったんです」

期間中は御祭神が描かれた御守も領布。8体集めると宝船の絵が完成する(画像提供:港七福神めぐり)

社務所が空いているのは、9:00~17:00まで。確かにその間、社務所を無人にする訳にはいきません。

「ピーク時は、下手したらトイレもまともに行けないくらい忙しいんですよ(笑)」

一年のうちでもお正月の限られた期間のみでいただける御朱印なので、それだけ港七福神めぐりを楽しまれる方が多いということの現れです。

歴史をはじめ、さまざまなお話を伺ううちに、「来年のお正月は、福袋ハンティングや年始のセールめぐりと合わせて、私も港七福神めぐりに挑戦してみようかな」という気分になりました。
寄り道に気を取られすぎて時間切れにならないよう、注意して挑みたいと思います!

期間中であれば、日をまたいでの巡拝も可能なそうなので、うっかり寄り道に気を取られすぎてしまっても、リカバリーできますよ。

 

港七福神めぐり
期間/元日から成人の日まで
時間/9:00~17:00 ※最終日の集印開始受付は14:00まで

宝珠院(弁財天)
住所:東京都港区芝公園4-8-55
アクセス:都営大江戸線「赤羽橋駅」より徒歩5分、都営三田線「芝公園駅」より徒歩10分

熊野神社(恵比寿)
住所:東京都港区麻布台2-2-14
アクセス:都営大江戸線「赤羽橋駅」より徒歩7分、東京メトロ日比谷線「神谷町駅」より徒歩10分

十番稲荷神社(宝船)
住所:東京都港区麻布十番1-4-6
アクセス:都営大江戸線、東京メトロ南北線「麻布十番駅」より徒歩1分

●大法寺(大黒天)
住所:東京都港区元麻布1-1-10
アクセス:都営大江戸線、東京メトロ南北線「麻布十番駅」より徒歩5分

麻布氷川神社(毘沙門天)
住所:東京都港区元麻布1-4-23
アクセス:都営大江戸線、東京メトロ南北線「麻布十番駅」より徒歩12分

櫻田神社(壽老神)
住所:東京都港区西麻布3-2-17 ※再開発に伴い、現在は近隣に一時移転中
アクセス:都営大江戸線、東京メトロ日比谷線「六本木駅」より徒歩10分

天祖神社(福禄寿)
住所:東京都港区六本木7-7-7
アクセス:都営大江戸線、東京メトロ日比谷線「六本木駅」より徒歩5分、東京メトロ千代田線「乃木坂駅」より徒歩5分

●久國神社(布袋尊)
住所:東京都港区六本木2-1-16
アクセス:東京メトロ南北線「六本木一丁目駅」より徒歩5分

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