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【株式会社COTS COTS LTD】日本とウガンダの架け橋を目指して【港区のベンチャー企業】

2024年11月11日

港区でスタートアップ事業の支援を行っている「港区立産業振興センター」に集う方々にお話を聞きながら、区内のベンチャー企業を紹介していく本企画。今回お話を伺ったのは、株式会社セントラルベースの正村様よりご紹介いただいたCOTS COTS LTDの共同代表を務める清水 政宏さんです。「港区にいながらアフリカのウガンダでレストランを経営されている方」とのこと。

COTS COTS LTD共同代表の清水 政宏さん

「どうしてウガンダに店を?」「いろいろあるのにレストラン?」

色々と疑問が浮かんできますが、そのお答えはご本人に直接伺ってみたいと思います。

偶然の出会いから始まった未知の国“ウガンダ”での飲食店経営

そもそも皆さんは『ウガンダ』という国のことをご存知でしょうか?

アフリカのどこかにある国ということは知っていても、正確な位置まで把握している人はそれほど多くないのではないでしょうか。

ウガンダはアフリカの中央。アフリカ最大の面積を誇るヴィクトリア湖の北部に広がる国です。つい最近まで周辺国を含め政治的に不安定な地域でしたが、近年は安定した経済成長を続けています。とはいえ、外務省のデータによると在留邦人数はわずか216名。日本人にとってはまだまだ未知の国といってもいいでしょう。

清水さんはどのようなきっかけで、そんな国を知り、レストランを作ることになったのでしょうか。

「東京の外資系証券やシンガポールの投資ファンドにいたんです」

ご挨拶が住むと清水さんはさっそく、そのように切り出しました。証券会社の金融マンとしてバリバリ働いていた清水さん。当然ですが、ウガンダのことはまるで知らなかったのだそうです。

「ですが、その投資ファンドが諸事情で解散することになったんです。そこでぽーんと暇ができた。さて、何をしようかと考えた時に、自分の知り合いで一番遠いところで暮らしているやつの所に会いに行ってみようと思いついたんですね。そこで色々調べたところ、たまたま大学の後輩がウガンダにいたんです。これが、私の初ウガンダでした」

なんという、衝撃的な動機でしょうか。2014年、清水さんは初めてウガンダの地へ降り立ちました。そして、そこで運命的な出会いを果たすのです。

「その後輩に、夜、現地在住の日本人が集まるお店へ連れて行ってもらったのです。建築家や、料理人、現地法人の社長などいろいろな肩書の方が集まっていました。日本人が少ないということもあり、そこで知り合った人たちとはすぐに意気投合しました。楽しく飲み食いしている時に、ウガンダの人口増加に対して外食する先が少ないよね、という話になったんです。もしかしたら、ウガンダに和食需要があるのではないか?と」

ウガンダという新天地で、気持ちが大きくなっていた清水さんは、その場にいた6名でウガンダで会社を立ち上げようかということになりました。

「6人いれば兼業しながらでもできるのではという計算もありました。それならば会社にしなくてもと思われるかもしれませんが、ウガンダでは外国人は土地を買うことができません。なので店舗の土地を借りるために2015年に現地法人を立ち上げました」

清水さんたちは、開店資金を作るために3年間それぞれの分野で働きました。お金を貯めつつ店舗の工事も並行しました。

こうして2018年10月、ついにウガンダの地に、日本食レストラン兼複合商業施設を開店したのです。

COTS COTS LTDがウガンダでオープンした商業施設「YAMASEN」

アフリカで提供されているとは思えない本格的な和食が揃う

「ウガンダに和食の需要があるのではという話から始まった開店でしたが、実際のところ、当時のウガンダでは和食の認知度はそれほど高くありませんでした。当店は比較的高単価ということもあり、開店当初のお客様の多くは、海外に留学経験があるウガンダ人か、欧米からきている駐在員など和食を知っている方でした。それと、インド系の方ですね」

地理的にインドに近いということもありますが、ウガンダはもともとイギリスの植民地でした。そのため、同じイギリス植民地の歴史をもつインド人はウガンダに今も多く住んでいるそうです。しかし、経営も軌道にのりだした開店2年目に、大問題が起こります。

2020年の世界的なコロナウィルスの流行です。

医療体制が先進国ほど充実していないウガンダでは、厳しいロックダウンが行われました。人の往来を制限するロックダウンは飲食店にとって死活問題です。メインの客層であった各国の駐在員は帰国してしまいましたし、夜間は完全外出禁止。日中の人通りも激減し、それまでの営業形態では立ちいかなくなってしまいました。

苦肉の策として清水さんたちが行ったのが、デリバリーの開始とメニューの見直しでした。それまで高級な和食を提出していたお店で、ラーメンなどの少し価格を抑えたメニューの展開と、カレーやハンバーグといった、日本の洋食業態の立ち上げを行ってみたのです。すると、これが現地の方々に刺さりました。ロックダウンが終わった後も人気の火は消えることはなく、今ではウガンダ人も足を運んでくれるそうです。

COTS COTS LTDが運営されている「YAMASEN」は、ウガンダの首都カンパラの人気店として今日も元気に営業中です。

料理を提供するだけでは終われない外国での日本料理店経営

そんな清水さんですが、現在は一年の半分以上は、日本で仕事をしていらっしゃいます。

お店にいても肩身が狭いので、と謙遜をされていらっしゃいました

「私は板前でもなければ、接客のプロでもありません。もともと各自の専門性を活かして会社を運営しようとしているので、経営と事業を分離しています。私は日本で、自分の専門である経営に専念しています」

日本での清水さんの主なお仕事は、何よりお店への仕入れルートの確保です。

ウガンダは農業が盛んなので、クオリティの高い新鮮な野菜はたくさん手に入るそうです。ですが内陸国なので海産物は輸入するしかなく、隣国タンザニアからウガンダのお店までのサプライチェーンを独自に構築するしかありませんでした。さらに、日本酒やみりんなどの調味料は日本から運んでいくしかありません。こうした食材輸入面でのバックアップを行うのが、現在の清水さんの大きなミッションなのだそうです。

清水さんによると、ウガンダのビジネス環境はまだまだ。「先進国と比べてビジネスインフラが脆弱で、様々な困難に直面することが多い」のだそうです。COTS COTS LTDとしては、現地の商慣習に乗ってなあなあに商売をすることもできたのですが、あえて古い慣習には乗らず、近代的なルールに則った商売をする道を選びました。

「困難に直面しつつも、ウガンダの将来の可能性を信じて正攻法でビジネスをしていくことが、今後のためにも大事と感じております」

とのことです。また、清水さんの行っている仕入れは、業者選定だけで終わりません。JICAやJETROといった機関と現地法人との折衝役を担ったり、まだまだ整備されていないタンザニアからウガンダまでの道路整備など、鮮度を保ったまま輸送するためのインフラ構築のお手伝いも行っています。つまり、COTS COTS LTDは飲食店の運営に加えて、日本の農水省などの支援を受けながら、東アフリカ一円の水産サプライチェーンの構築も行っている会社なのです。せっかくインフラを整備しても、それだけではおいしくて新鮮な魚は届きません。そこで、水産加工会社の社員へ食品の取り扱い方をレクチャーすることも行うこともあるそう。

「現地の人に冷蔵庫の使い方を指導するところから始まるんです。こうした物流網の構築というのは、大きな会社でしたら身内だけで行うのでしょうが、弊社の規模では、現地の方々と協力しながら少しずつ進めていくしかありませんでした。ですがこうした地道な努力が実り、東アフリカでの水産バリューチェーンが形となってきたんですよ」

仕入れた魚を運ぶだけではなく、締め方や捌き方まで現地の方にレクチャーしている

レストランを安定して経営するための活動が、東アフリカ全域に影響を及ぼす規模の支援につながっているというのはとても面白いお話です。

「ロジスティクスが完成すれば、ウガンダへの輸入だけではなくウガンダからの輸出も可能となります。たとえば、ウガンダで獲れるティラピアという白身魚は、加工原料として世界的に需要があるんですよ」

COTS COTS LTDの事業は思っているよりもはるかに大掛かりなもののようです。

しかし、清水さんの口から語られるウガンダの物流事情のお話を聞いていると、こと物流に関しては日本という国が整いすぎているのだということをしみじみと感じます。頻繁に停電が起こることも考慮した食材の保管方法なんて考えたこともありませんでした。日本だって国土が山に覆われています。高速道路が開通する前は、日本も陸送はウガンダのことを笑えないくらい大変だったのかもしれません。

すると清水さんは、インフラ整備は途上国支援という面もあるんですが、日本人のためでもあるんですよと「食料安全保障」という考え方を教えてくださいました。たとえば、日本が小麦の輸入を一か国に頼っていた場合、その国で大規模災害や戦争が起こると、日本人は小麦を食べられなくなってしまいます。食料自給率が低い日本では、なるべく多くの国と仲良くして、様々な食料を安定して輸入できるネットワークを構築することが大切なのだそうです。

そのような視点からみると、まだ日本国として深い関係を結べていない国に、COTS COTS LTDさんのような在留邦人の企業がいてくれることは、とても頼りになりますね。

お金を渡すだけで果たして現地の発展になるのか

現在、ウガンダの「YAMASEN」では40名近いスタッフが働いていらっしゃるそうです。もともとイギリスの植民地だったということもあり、現地では英語である程度コミュニケーションが取れるそうですが、仕事に対する姿勢は旧宗主国のイギリスとは大きく異なるそうです。

「当社のスタッフは若い人が多く、会社や組織で働く経験がない人がいます。彼らに対して仕事とは何か、組織として動くとはどういうことかなどそこから教えていくことになります。また、国全体を見てもオフィスワーカーや工場労働者よりは農業従事者が多い国なので、時間に対する考え方も少しおおらかというか、工業化によって発展してきた国とはまた異なった特徴があります。ただ、これは彼らの文化なので尊重しつつも、やる気のあるスタッフはビジネスパーソンとして育ててマネジメントを任せたいと思っています」

そのような風土のなか、優秀なスタッフを確保するには「お給料」しかないと清水さんはおっしゃいます。ですが、ただ、高いお給金を払えばいいという考えでもないそうです。

「ウガンダで営業されている外資系企業の中には、高給で現地スタッフを雇用しているところもあります。当然給与が高いほうが喜ばれますが、自分のスキルに見合わない給与をもらうことでその後のキャリア形成がうまくいかないケースが散見されます」

なんだか、わかる気がします。

「また、外資系企業の多くが現地人を労働者として雇用するものの、マネジメントなど管理職に就けるのはわずかです。果たしてそれが、本当にウガンダのためになっているのでしょうか。弊社は、ウガンダ現地の企業よりは高めの給料をスタッフに支払っているかもしれません。ですが決して多すぎるということもありません。その代わり、弊社はスタッフに技術はもちろんマネジメントの手法まですべて教えることで、お金以外の付加価値を感じてもらえるようにしています

現地スタッフが自分たちで調理も行えるよう技術はすべて教えているそう

なるほど。もし独立されたとしても、ご自身で事業を起こしていけるだけの技術と経験があれば、これからの人生に自信を持てますものね。実際に“YAMASEN”で調理技術を学んだスタッフの中には、ウガンダの隣国ケニアと日本との国交60周年記念イベントに、日本人料理長の右腕としてウガンダから派遣され、腕を振るったシェフもいらっしゃるそうです。

そんなCOTS COTS LTDは、現在ウガンダの東隣、ケニアのナイロビに二号店を出すべく動き始めているのだそうです。

「ナイロビは昔からの大都市で、食に対して保守的な国が多いアフリカにあって珍しく、食に対するマインドがオープン。日本食の普及を試みるには面白い国だなと思っています」

「これからのナイロビ展開が楽しみです」と笑顔でナイロビの魅力も語ってくださいました。

最後に、これから外国での起業を試みたいと考えている若い方へアドバイスはないかと聞いてみました。

考えている暇があれば、行けばいいと思います。勿論うまくいかないことの方が多いですし、特に新興国は本当に苦労することが多いです。改めて日本という国はビジネスインフラが整っていて経済大国なのだなと実感すると思いますですが、アフリカ諸国には日本にはない活気があるんです。あの、町の至る所から人があふれ出てくるようなエネルギーは、絶対に若いうちに体感するべきだと思います。今日より明日の方がよくなるという希望を抱いている人たちが周りにいる、そのエネルギーを得るためだけにでも、まずは動いてみて欲しいと思います」

私も物心がついたころに失われた30年が始まった世代です。日本がイケイケだった時代なんて体感したことはありません。これからどんどん発展していくアフリカには、もしかしたら日本人が忘れてしまった、大切な何かがあるのかもしれません。

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