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【港区立郷土歴史館】……白金台駅すぐにある宮殿の正体は区立の博物館!?

2023年9月25日

立派過ぎる港区立郷土歴史館に違和感

みなさん市町村や区が運営する博物館についてどのようなイメージがありますか?

私はどうしても、「国立や県立の博物館に比べると展示の規模が小さくて残念……」という印象をもっていました。

ところで、こちらの画像をご覧ください。

この建物は、東京メトロ白金台駅から徒歩3分のところに建っています。

まるで宮殿のように立派な建物!なんとこれが、港区立の郷土歴史館なんです。

どうしてここまで立派な建物を作ることができたのでしょうか?

もともとは東京大学のキャンパスと対で建てられた?

そのヒントを知るためには、隣の建物の正体を知る必要があります。

「港区立郷土歴史館」の隣に立っているのは、「東京大学医科学研究所」。感染症や難治疾患の対策をするべく、国内最先端の設備で研究と医療を進めている研究所です。

「港区立郷土歴史館」はこの「東京大学医科学研究所」と対になるデザインで、昭和13(1938)年に建てられました。

建築当時の名称は「国立公衆衛生院」。建築のきっかけは関東大震災後の復興の一環として、日本の公衆衛生の向上のための調査研究機関の設立を援助すると、アメリカ・ロックフェラー財団より申し出があったことです。政府はこの申し出を受け、東京帝国大学伝染病研究所および同附属病院と同じ敷地内に、厚生省所管の施設として「国立公衆衛生院」を建設することとしました。

地下1階、地上6階、搭屋4階、延床約15,000㎡もある立派な建物は、昭和13(1938)年10月に竣工しました。

設計は、内田祥三(うちだよしかず)。東京帝国大学建築学科で、構造計算法と鉄骨および鉄筋コンクリートの研究を行った建築学の権威で、東京大学の安田講堂などの設計も手掛けた大物です。「国立公衆衛生院」の竣工から5年後には、東京帝国大学の総長も務めています。

彼の設計は「内田ゴシック」と称されています。控え壁と、縦にひっかいたような模様のあるスクラッチタイルを多用した外壁が特徴的で、港区立郷土歴史館にもその傾向が見えます。五連アーチが主張する中央棟と、シンメトリーに翼を広げたように見える左右棟は、まるでフランスのヴェルサイユ宮殿のようです。

館内も非常に豪奢な内装です。

入ってすぐ目の前に広がる吹き抜けのホール

2階から1階を見下ろすとホールの印象ががらりと変わる

設計者の内田は、白金台に住んでいました。「国立公衆衛生院」の設計はかなりのお気に入りだったらしく、晩年は、自宅の窓から見える国立公衆衛生院を眺めては悦に入っていたという逸話が残っています。

建物そのものが貴重な展示品!

「国立公衆衛生院」は、2002(平成14)年に、国立医療・病院管理研究所や国立感染症研究所口腔科学部の一部と合体し「国立保健医療科学院」として改組されました。現在、研究機関の機能は埼玉県和光市へと移転しています。

残された建物ですが、文化財保護の観点から港区が取得し、耐震改修やバリアフリー対応を施したうえで、現在の郷土資料館へと生まれ変わりました。

常設展示では、「海とひとのダイナミズム」「都市と文化のひろがり」「ひとの移動とくらし」という3つのテーマに沿って、港区で暮らしてきた人々の営みを伝えます。また、企画展や特別展も定期的に開催されているそうです。

今回は、たまたま通りがかった際に写真を撮影しただけですが、いつか正式に内観や建物の見どころを取材させてもらえたらいいな、と考えています!

港区立郷土歴史館
住所:東京都港区白金台4-6-2
時間:9:00~17:00、土曜のみ9:00~20:00
休館日:毎月第3木曜日(祝日等の場合は前日の水曜日)、年末年始(12月29日~1月3日)、特別整理期間
料金:大人300円、子ども100円(※特別展は別途料金が必要になります)
アクセス:東京メトロ・都営地下鉄白金台駅「2番出口」より徒歩1分、都営浅草線三田駅「A7出口」より徒歩9分

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