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【港区・西新橋】スタートアップ×飲食店!?「サステイナブル」がテーマのまちづくりとは?

2025年12月19日

「虎ノ門ヒルズ」や東京メトロ日比谷線「虎ノ門ヒルズ駅」の開設、さらに虎ノ門病院に隣接する「虎ノ門アルセタワー」など、着々と再開発が進む虎ノ門エリア。そこから東に向かって歩くこと15分、JR「新橋駅」の周辺でも、老朽化したビルの建て替えや再開発が計画されています。

そんな虎ノ門と新橋の間にあるのが、西新橋エリア。歩いてみると、中小ビルや個性的な飲食店が立ち並んでいます。

画像提供:UR都市機構

今回は、この西新橋エリアで進む“エリア主役型のまちづくり”にフィーチャー。再開発が進む虎ノ門と新橋に挟まれ、まさにエアポケットとなっている西新橋エリアは、独自のまちづくりに取り組んでいます。

独立行政法人のUR都市機構が挑戦する、西新橋エリアのまちづくりとは

西新橋エリアのまちづくりを担当しているのは、独立行政法人のUR都市機構。都市再生や賃貸住宅の管理などを通して、都市の発展と国民生活の安定・向上に貢献する機関です。

西新橋エリアのまちづくりに携わっている、UR都市機構 東日本都市再生本部の伊比友明さんと丸山詩乃さんにお話を伺ってきました。

UR都市機構 東日本都市再生本部の伊比友明さん(左)丸山詩乃さん(右)

UR都市機構が西新橋エリアに関わることになったきっかけを伺うと、「実はUR都市機構として、虎ノ門エリアのまちづくりには17年ほど前から携わっています。虎ノ門病院の周辺や愛宕神社の参道近くも手がけているんです」と伊比さん。

虎ノ門から新橋へ歩いてみると、「ビジネス街」から「飲食店街」への緩やかなグラデーションがあり、西新橋エリアはそのちょうど中間に位置します。

伊比「再開発というと、スクラップ&ビルドで大きな建物を建てるイメージがありますよね。でも、それと同じ手法で、中小ビルや個人経営の飲食店が立ち並ぶ、この西新橋エリアの魅力を残すことができるのだろうか? と考えました」

そこで、中小ビルのリノベーションを進め、少人数で入居できるスタートアップを誘致し街全体の活性化を図るという方法を選択。これは、行政の方針でもあったそう。

伊比「既成市街地の中小ビルをリノベーションしても、床面積が増えるわけではないですよね。賃料もそこまで上がらないので、もとの中小ビルが持つ“面”をベースにしたリノベーションがメインのまちづくりを進めることは、民間のビジネスとして成立させにくい。だからこそ、半官半民の我々が挑戦すべきことだと思います」

確かに、“再開発”と聞くと、ショップやレストランなどのテナント+大規模オフィスが入るランドマーク的な商業ビルが建てられて、というイメージ。おっしゃるように、リノベーションしたからと言って企業を誘致できるか? 賃料が増えるのか? というリスクを抱えると思うと、ビジネス的な成功が難しいというのは想像に難くありません。

再開発でランドマーク的商業施設が登場した虎ノ門。

伊比「我々も長年虎ノ門エリアの再開発に携わらせていただいていますが、やはり“虎ノ門”だけで考えてはいけない。すぐ隣にある、この西新橋エリアも取り残されないように、一緒に地域の価値を上げていきたいんです」

食とスタートアップで街を活性化する「Foodα」プロジェクト

西新橋エリアのまちづくりでは、2025年1月に発足した「Foodα(フーダ)」というプロジェクトも動いています。

Foodα のキーワードは、「サステイナブルな食材」や「フードテック(フード+テクノロジー)」。食の未来を創る技術やサービスを提供し、人・地球・社会に優しい仕組みを作りあげるとともに、「食のイノベーション」で西新橋エリアを活性化させよう、というプロジェクトです。

食の未来? なんで西新橋で食?
そして「人・地球・社会に優しいプロジェクト」「食のイノベーション」とは、具体的にどういうこと……? 不思議に思っていると、「そうですよね(笑)」と、伊比さん。

実は、最初から“食”をテーマにしていたわけではないそう。なぜ最終的に食がテーマになったのでしょうか?

伊比「平成30(2018)年から3年間、UR都市機構が所有するビルを使ってある実験を行ったんです。1・2階にクラフトビールのお店、その上階にスタートアップのオフィスなどを置き、どのように利用されるかの検証でした。その結果、スタートアップの方々に求められているのは、しっかりしたきれいなオフィスではなく、中小ビルの自由度の高い空間や、気軽に人脈を広げられる開かれたスペースだということが分かったんです」

さらに、虎ノ門・西新橋エリアは企業や飲食店も多く、食との親和性が高いエリアであることから、令和5(2023)年に「食のスタートアップ展示」をする「まちなかショーケース」をオープン。

伊比「ECサイトでの販売が中心のスタートアップに、実際の消費者が体験できる場を提供したいと考え、まちなかショーケースをオープンしました。現在のSustainable Food MUSEUMの前身です。そこで、スタートアップの方が開発した新しい食材の展示に加え、サステイナブルな食材を使ったおにぎりを販売してみました。
その結果、消費者との出会いだけでなく、スタートアップと大企業をつなぐ新たな出会いの場としても機能することも分かったんです」

画像提供:UR都市機構

「虎ノ門エリアは食品系の企業が多いというのもポイントかもしれないですね」と伊比さん。新規事業に向けて革新的な技術を持つスタートアップを探したいという、大企業のニーズにも応えられる場になったそう。

そしてもうひとつ、西新橋エリアならではのメリットも。

伊比「この辺りは霞が関も近いので、補助制度の相談・申請だけでなく、スタートアップの方々の官庁に対するロビー活動にも最適なんですよ」

なるほど。話を聞けば聞くほど、西新橋エリアは最高の場所なのかも、と思わずにいられません。

パートナー企業とのつながりは“桃太郎のように関係性を構築!

現在Foodαプロジェクトに参加しているのは、科学的技術を活用し食の視点でさまざまな課題解決に取り組む「株式会社リバネス」、食を通じて環境改善・健康・社会的債務の課題解決を目指す「Sustainable Food Asia 株式会社」、食の新たなエコシステムづくりを目標とする「株式会社UnlocX」、「日鉄興和不動産株式会社」など。

Sustainable Food Labに、Foodα参加企業のロゴが。

伊比「我々UR都市機構は不動産事業がメインなので、当然、食のスタートアップの方とのつながりもありません。そこで、パートナーとなってくれるさまざまな企業の方に協力してもらい、少しずつ進めていきました。イメージとしては、桃太郎(笑)。プロジェクトを進める過程で、徐々に仲間が増えていった感じです」

既存市街地で“食”をベースにさまざまな化学反応を目指したまちづくりプロジェクト「Foodα」。プロジェクトの立ち上げ時から、さまざまな化学反応が生まれていたのかもしれないですね。

思い込みに左右されないで!「サステイナブル」「イノベーション」の間口は想像以上に広い

Foodαの取り組みである「食のイノベーション」のプロジェクトのひとつが、「TORANOMON JUST RIGHT NEW FOOD」です。

画像提供:UR都市機構

西新橋エリアの飲食店が、スタートアップが開発したサステイナブル食材を使ったメニューを提供することで、食材の認知度アップにくわえ、「西新橋エリアは新しい食に出会える場所」という特長付けの一助を担っています。

TORANOMON JUST RIGHT NEW FOODの取り組みで、飲食店との調整や地元の開拓、イベント運営まで幅広く担当しているのが、同じくUR都市機構の丸山さん。

丸山「サステイナブルと聞くと少し身構えてしまうかもしれないので、“たまには考える。地球と体にちょうど良い新しいフード”というキャッチフレーズを付けています。まさにこの感覚で、ふと思い出した時にお店に来てほしい、と思っています」

ところでお話を伺っている途中で恐縮ですが、「サステイナブルな食材」「サステイナブル・フードテック」って、具体的にどのようなものか思い浮かびますか?

TORANOMON JUST RIGHT NEW FOODに参加している飲食店が使用しているサステイナブルな食材は、大豆ミートやお米を原料にしたアイス、廃棄されるパンを使ったクラフトビール、地下海水を用いた陸上養殖の青のりなど。

多様なサステイナブルな食材。 画像提供:UR都市機構

植物由来の食材や捨てられてしまう食材を有効活用して、新しい食べ物を生み出していることが「サステイナブル=持続可能」ということ? でも、それだけではないような気がします。

丸山「私も最初は、大豆ミートくらいしか思い浮かばなかったんです(笑)。
でもこのプロジェクトに関わる中で、たとえば食品アレルギーの方でも安心して食べられるもの、公正に取引がされているフェアトレードの食品もサステイナブルだということを知って、意外と身近なんだな、と気づきましたね」

確かに、言葉のイメージから環境保護などを想像してしまいがちですが、丸山さんの言葉で、別の視点から見た「持続可能」もある、と気づかされます。

丸山「“食のイノベーション”も、直感的に伝わりづらいかもしれませんが、新しい食材を開発することだけがイノベーション(革新)ではないと思うんです。
たとえば、私たちがサステイナブルな食材について正しく理解することや、食事の選択肢の一つに加えるのも立派な食のイノベーション」

「西新橋エリアには、地球や自分たちに優しい食材を使用したメニューを気軽に試せるお店がある。じゃぁ一度試してみようかな? と、感じてもらうことが、街から食のイノベーションを広げることもになると思います」と、丸山さん。

ちなみに、Foodαのプロジェクトに関わる前は、丸山さんもサステイナブルについて特には意識していなかったそうで、「配属されたときに“食のイノベーションを推進するプロジェクトだよ”と言われましたが、ピンとこなかったのが正直な感想です(笑)」とのこと。

西新橋エリアで、サステイナブルな食材を使った食事をいただく。そして少しだけ「食」について考えてみることで、私たちもイノベーターになれるんですね!

「食のスタートアップ×飲食店」が西新橋エリアに化学反応を起こす

「TORANOMON JUST RIGHT NEW FOOD」がスタートしたのが2023年。参加する飲食店も、年を重ねるごとに2店舗、7店舗と増えていき、2025年には12店舗にまで増えています。

画像提供:UR都市機構

「当初は紹介してもらった飲食店さんだけでしたが、今は自分たちでも、 “一緒にやりませんか?”と地元の飲食店さんに声をかけたり、営業のようなこともしています」と丸山さん。

丸山「初期はスタートアップの方が開発したサステイナブルな食材を各飲食店に持参して、私たちが食品について説明していたんです。でも2025年は、スタートアップの方々が直接自社商品をプレゼンし、飲食店さんに食材を選んでもらうイベントを開催しました」

イベント形式にしたことで、よりスタートアップが開発した商品のバックストーリーや課題解決の熱意が飲食店にも伝わり、今まで以上に共感を得られたそう。

丸山「TORANOMON JUST RIGHT NEW FOODの12店舗と、使用した食材のスタートアップさんが集まって、メニュー発表会も開催しました。その時、こちらが促さなくても、参加してくれた飲食店さんをはじめ、みなさんがメニュー開発時のお話などをされて盛り上がっていて。
西新橋エリアの“横のつながり”にも貢献できたと実感できた瞬間で、本当にうれしかったです」

実は西新橋エリアは、商店会のように横のつながりを作れる組合などがないそう。

TORANOMON JUST RIGHT NEW FOODは、私たちが気軽にサステイナブルな食材に触れる機会を提供してくれるだけでなく、しっかりと新たなコミュニティの土台にもなっているようです。

西新橋のまちづくりが目指す、人と食をつなぐ未来

取材を通して感じたのは、西新橋エリアのまちづくりは単なるビルの建て替えではなく、人と人、人と食をつなぐ新しいまちづくりのかたちだということ。

食のスタートアップの挑戦、既存飲食店とのコラボレーション、行政やUR都市機構をはじめとする多くの企業支援が組み合わさることで、独自の魅力を生み出しています。

TORANOMON JUST RIGHT NEW FOODに参加している12店舗の飲食店で提供しているサステイナブル食材を使用したメニューは、どれも「美味しくて」「新しくて」「食の持続性にも貢献できる」お料理。

画像提供:UR都市機構

サステイナブルやテクノロジーをベースに生み出された食材は、満足感があるの? 味気ないのでは? 地球に良くても高いのでは? と感じてしまうかもしれませんが、そんな心配は全く不要。なぜなら、どれも西新橋エリアの人気飲食店によるお墨付きがあり、個性的で美味しいメニューを開発してくれているからです。

伊比さんも丸山さんも「どのメニューも本当に美味しいんですよ!」と太鼓判を押すほどの完成度。

西新橋エリアは、目立つランドマークはなくても、個性的な飲食店やリノベーションビル、スタートアップの方々が集まり、新たなステージに向かっている最中。まさに“エリア主役型”のまちづくりなのです。

TORANOMON JUST RIGHT NEW FOODだけでなく、Foodαプロジェクトはまだまだはじまったばかり。

「たまには、地球と体にちょうどいい」お食事をいただきに西新橋エリアを訪れると、新しい発見に出会えるかもしれません。

明るく開放的な「Sustainable Food MUSEUM」は、日本をはじめ、アジアを含めた100社の最先端なサステイナブル・フードに関する商品やサービス展示、食体験ができる場所。
サステナブルフードの開発と普及を目的とした「Sustainable Food Lab」は、なんとキッチン付きのレンタルシェアオフィス。お野菜たっぷり、サステイナブル・フードを使ったランチも、ボリューミーでおすすめですよ!

新虎イノベーションイニシアティブ Foodα
TORANOMON JUST RIGHT NEW FOOD
Sustainable Food Museum
住所:東京都港区西新橋1-17-8 須田ビル本館1階
時間:10:00〜17:00
定休日:毎週土・日曜、祝日
アクセス:東京メトロ南北線「内幸町駅」より徒歩3分、東京メトロ銀座線「虎ノ門駅」より徒歩6分、JR・東京メトロ銀座線「新橋駅」より徒歩7分

Sustainable Food Lab
住所:東京都港区西新橋一丁目20番10号 サンライズ山西ビル1階
時間:11:30〜14:00
定休日:毎週土・日曜、祝日
アクセス:東京メトロ日比谷線「虎ノ門ヒルズ駅」「虎ノ門駅」よりそれぞれ徒歩4分、東京メトロ南北線「内幸町駅」より徒歩5分

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