港区の坂・「狸穴坂」
古くからの町名が今も生きる地
港区にある狸穴坂(まみあなざか)は、麻布台2丁目と麻布狸穴町に挟まれた坂です。
港区のHPによるとその名前の由来は
“まみとは雌ダヌキ・ムササビまたはアナグマの類で、昔その穴が坂の下にあったという。採鉱の穴であったという説もある。”
とのこと。
坂のある麻布狸穴町は、港区では数少ない、古くからの町名がそのまま現在の住所に残っている土地です。江戸時代に飯倉狸穴町として成立したものが、明治に狸穴町、昭和に麻布狸穴町と名を変えながらも、現代まで続いています。
こういった例は、港区では麻布狸穴町とその隣の麻布永坂町のみで、地名が成立したとされる江戸時代の情景に思いをはせることができます。
かつての天文台と日本経緯度原点を発見!
狸穴坂のほど近くには、「日本経緯度原点」があります。
明治時代、この地に東京天文台が設置されました。ここを始点として星を観測し、この地点の綿密な緯度経度を決定したのち、三角測量で全国各地の緯度経度を決定していく作業を行ったのです。つまり、日本における現代的な測量の開始点であり、伊能忠敬以来悲願であった日本の姿の全容や、世界基準での日本の位置を把握するための重要な地点となりました。
東京天文台は関東大震災で甚大な被害を受け、三鷹へと移転し、現在の国立天文台となりました。
現在では、国土地理院の標識と関東大震災後に設置された金属標および記念碑があるのみです。
港区の個性豊かないきものの名がつく坂たち
狸穴坂の“まみ”は、“魔魅(まみ)とも書きます。今日の動物学上ではアナグマとされており、タヌキと混同されたこともあったといいます。
実際私の実家の方には、タヌキもアナグマも出没しますが、遠目からはパッと見分けがつきません……。10mほどまで近づけば見分けられるのですが。
狸穴坂以外にも、港区にはいきものの名がつく坂が多数あります。
人名や固有名詞に含まれているもの由来とみられるものを除いたとしても、
牛坂
狸坂
牛鳴坂
蛇坂
があります。
今では東京の喧騒の中にあるこれらの坂ですが、かつては様々な野生のいきものたちが住んでいたと思うと、普段とは違って見えてくるのではないでしょうか。