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【赤坂】宮内庁御用達の名店「陶香堂」で、とっておきの和食器を!

2024年8月15日

赤坂一ツ木通り商店街振興組合の理事長でもあり、うつわ・陶磁器のセレクトショップ「陶香堂」の3代目として、赤坂と深い縁を持つ吉岡聰一郎さん。
前回は赤坂一ツ木通り商店街や赤坂の街についてお話を伺いましたが、今回は1936年創業の陶香堂について、お店を継いだ経緯などを教えてもらいました。

陶香堂 代表取締役 吉岡 聰一郎さん
赤坂生まれ・赤坂育ち。宮内庁御用達を拝命した、うつわ・陶磁器のセレクトショップ「陶香堂」の3代目。現在は「赤坂一ツ木通り商店街振興組合」の理事長をはじめ、赤坂がさらに発展することを目指して事業を行っている「茜共創プロジェクト」にも参加。

▼赤坂一ツ木通り商店街についてはこちらの記事をご覧ください
飲食、芸事、昼と夜……“七色の顔”を持つ街・赤坂!【赤坂一ツ木通り商店街】

職人さんがていねいに仕上げた良いうつわを、良い値段で

東京メトロ銀座線・丸ノ内線「赤坂見附駅」から徒歩2分。一ツ木通り沿いに掲げられた、青藍ののれんが「陶香堂」の目印です。昭和11(1936)年、港区青山に「吉岡陶香堂」として創業し、初代店主は吉岡さんのおじいさま。現在の赤坂に移転したのは、昭和23(1948)年。

多彩なシーンに合わせて、うつわも楽しみましょう。 画像提供:陶香堂

「戦前、祖父が南青山にお店を構えたのですが、戦争がはじまり、出身地の富山に戻ったんです。戦後、改めて港区に戻って店舗も赤坂に移し、現在まで同じ場所にあります」

陶香堂で扱っている和食器は、日々の食事を華やかに彩ってくれる日常使いはもちろん、多くの料亭、飲食店やホテル、また、宮内庁をはじめとする省庁でも利用されており、その品質の高さは折り紙付きです。

「創業当初は、京都の清水焼だけを扱うお店だったんです。後に、お客様のご要望もあり、有田焼などほかの産地の和食器も取り扱いはじめました。初代からのこだわりは、基本的に作家さんの作品は扱わない、ということですね」

基本的に作家さんの作品を扱わない、とは?

「基本的には、窯元の職人さんが作り上げたものを仕入れる、というスタンスなんです。
なぜかと言うと、名のある作家さんのうつわは、使い勝手などの前に、その作家さんの名前により一定の値段がついてしまう。そうするとそのうつわは、こだわりがある方の手元にしかいかない。
でも、職人さんが手掛けたうつわであれば、お客さまがイメージする値段と大きくかけ離れることが少ない。そして、お客さまからの声を直接窯元に届けて、“日常的により使いやすいうつわをご提供したい”と常に考えています」

取り扱う商品のこだわりを伺って、(ちょっと無粋ですが)のれんに書かれた「宮内庁御用達」の文字から想像したより、お手頃価格の和食器が並んでいた理由に納得です。

「“誰もが手に取りやすい、良いうつわを仕入れる”というのが、祖父の代からのこだわりなんです」

そして気になる、宮内庁御用達の文字についても伺ってみました。

「宮内庁から依頼があったうつわを、適宜、各産地の職人さんと相談して作成し、納めています。明治の頃から使用されているうつわを、再度作るような機会もありますね。生地の薄さなど、高い技術を求められる場合もあります。
こういったことが繰り返されることは、結果的に、現代の職人さんたちに技術が継承されることにも繋がります。神社などの、宮大工さんの技術継承に近いかもしれませんね」

どんな料理も映える! 和食器の魅力は無限大

伝統的な色合い・絵柄をたたえたものからモダンなデザインまで、お皿や小鉢、湯呑、マグカップや箸置きなど、多彩な和食器が店内を彩る陶香堂。

「洋食器と和食器を比較すると、和食器の方が“うつわの幅”があるので、面白さがあります」と、吉岡さん。

視覚からも涼を取り入れられるのが、和食器の魅力。 画像提供:陶香堂

「和食器の魅力は、料理によって、うつわの“顔”が変わることですね。
洋食器は、丸皿で、色も白くて、素材も磁器しかないですよね。だからパターンが決まってしまう。でも和食器は、色や形、素材も豊富です。たとえば、陶器のざらっとした手触りは和食器特有のもの。形や素材の幅が広いから、どんな食材や料理を乗せても映えるんです。
料理のジャンルも選ばないので、フレンチレストランでも和食器を使うお店が増えてきましたよね」

確かに、和食器には季節ごとに絵柄や色を選ぶ楽しさがあり、日本料理屋さんなどでは、お料理とともに、うつわも食事を演出する大切な要素。

うつわにより、料理も一層映えます。 画像提供:陶香堂

陶香堂がお店を構える赤坂は、飲食の街でもあり、少し前は料亭の街でもありました。近隣の飲食店とのお取引、食器について相談されることもあるのでしょうか?

「もちろん昔から飲食店とのお取引はありますし、今でも相談されたら、“今度いいお皿持ってきますよ”というやり取りをすることもあります。
僕が子どもの頃、料亭がたくさんあったのですが、“グラスやお皿が足りない!”と言って、配達していたのを見た記憶もありますね(笑)」

……え? 食器の配達なんて、はじめて聞きました。

「当時、赤坂の夜がどれだけにぎわっていたかが分かりますよね。さすがに今は在庫の問題などもあるので、お応えするのは難しいですけど」

料亭で食器が足りなくなるなんて、赤坂ならではのエピソード! 驚いていると、「実は僕がお店に入った時、負の遺産があったんですよ。行き場のない食器たちという(笑)」と、笑いながら教えてくれました。

ターニングポイントは、日本を知ってる“つもり”に気づいたこと

子どもの頃は、お店と自宅が一緒で祖父母もいっしょに住んでいたから、将来は……という雰囲気は、なんとなく感じていた、という吉岡さん。

初代陶香堂店主・吉岡澄雄さん 画像提供:陶香堂

「ただ、特に両親から“継いでほしい”とははっきり言われておらず、好きなことをやらせてもらっていました。
大学を出て3年ほどアメリカに行ったんですが、日本についていろいろ質問されるんですよ。こちらもちゃんと質問に答えたいんですけど、うまく説明ができない。日本の歴史や文化について、知っているつもりだったけれど、きちんと理解していなかったことに気づいたんです。そこで改めて、和食器を扱う家業には魅力があるな、と感じました。戻ってお店を継ぐことで、日本の伝統文化を学び直すことができるのでは、と」

アメリカから戻られたあと、そのまま陶香堂で働かれたのでしょうか?

「お店に入ったのは2010年です。それまでは数社、全く違う業界で働いていました。実は、僕より先に弟(専務取締役 吉岡速人)が入社しており、ホームページの制作などに着手してくれていたんです。
僕が入社してからは、ホームページのリニューアルやオンラインストアの開設など、弟と二人三脚で切り盛りしています」

「ただし、ホームページなどをはじめとした、お店のハード面の改善を積み重ねても、“どんな商品を扱うか”というこだわりや根幹は、創業当時から変わりません」と、吉岡さん。

「仕入れについても、教えられたことはないですが、兄弟そろって子どもの頃からずっと見ていたので、自然と身に着いた、感覚を受け継いだという感じです。仕入れる商品の傾向が弟と違うことも、お客さまの幅が広がることにつながり、お店にとっても良いことだと認識しています」

モダンな和食器も取り揃えています。 画像提供:陶香堂

幼いころから、感性を磨かれた吉岡さん。陶香堂に並ぶのは、職人さんが手塩にかけて、ていねいに作りあげた美しいうつわたちです。
忙しい毎日で、毎日食事を作ることが難しくても、テイクアウトの食事を艶やかなうつわに移すだけで、大切な食事の満足度は各段にアップします。ほかにも、手馴染みのいいカップでゆっくりお茶を飲むだけでも、QOLが向上するでしょう。自分のモチベーションを上げてくれる、“とっておきのうつわ”を探してみるのはいかがでしょうか?

注いだお酒がゆらめくと、うつわの魅力も際立つお猪口も。 画像提供:陶香堂

最後に、吉岡さんに赤坂でいちばん好きな場所を聞いてみました。

「赤坂氷川神社は好きですね。自分の七五三も結婚式も、赤坂氷川神社でしたし、にぎやかなお祭りだけでなく、祭事がない静かな境内にも癒されます。高台にあるから、 “山”って言ったりもするんですけど(笑)、気持ちのいい空気が流れている場所ですよね」

赤坂氷川神社

陶香堂
住所:東京都港区赤坂3-21-12
時間:平日/11:00~19:00、土曜/11:00~17:00
定休日:日曜、祝日
アクセス:東京メトロ丸の内線・銀座線「赤坂見附駅」より徒歩2分、千代田線「赤坂駅」より徒歩5分

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